電子的診療情報連携体制整備加算 完全ガイド — 旧 2 加算統合と加算 1/2/3 の差
令和8年度改定で医療情報取得加算と医療DX推進体制整備加算を廃止統合し新設された『電子的診療情報連携体制整備加算』を、点数・施設基準・併算定不可・収益試算まで一次資料の条文で解説。

- 公開
- 2026-06-11
- 更新
- 2026-06-11
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はじめに
令和 8 年度診療報酬改定 (令和 8 年 6 月 1 日施行) で、初診・再診まわりの「医療 DX 系加算」が大きく組み替わりました。これまで別々に算定していた 医療情報取得加算 と 医療 DX 推進体制整備加算 が廃止され、両者を再編した 電子的診療情報連携体制整備加算 が新設されます。本記事は、厚生労働省「個別改定項目について」(令和 8 年度改定、答申 2026-02-13) の該当条文だけを根拠に、点数・施設基準・併算定不可・収益試算を整理します。読者はクリニックの院長・事務長・総務を想定しています。
この改定は「医療 DX や ICT 連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価」の項目 (項目番号 Ⅲ-3-①、p.510) に位置づけられています。基本的な考え方として、PDF は次のように記しています。
医療情報取得加算及び医療 DX 推進体制整備加算を廃止し、診療録管理体制加算におけるサイバーセキュリティ対策に係る要件を見直した上で、初診料、再診料、外来診療料及び入院料加算として、電子的診療情報連携体制整備加算を新設する。(p.510)
何が変わるか / 変わったか
旧 2 加算 → 1 本に統合
これまでクリニックが初診・再診で算定してきた医療 DX 系の加算は 2 系統ありました。
- 医療情報取得加算 — 初診 月 1 回 1 点 / 再診 3 月に 1 回 1 点 (現行欄、p.510-512)
- 医療 DX 推進体制整備加算 — 初診時に区分に応じた点数を月 1 回 (現行欄、p.511)
令和 8 年度改定では、この 2 つをいずれも廃止し、電子的診療情報連携体制整備加算という 1 本の加算に再編します。下図がその構造変化です。
新しい点数 (医科)
新設加算の点数は、初診・再診・外来診療料で次のとおりです (いずれも医科診療報酬点数表)。
| 場面 | 区分番号・注 | 点数 | 算定頻度 |
|---|---|---|---|
| 初診時 | A000 注 15 イ (加算 1) | 15 点 | 月 1 回 |
| 初診時 | A000 注 15 ロ (加算 2) | 9 点 | 月 1 回 |
| 初診時 | A000 注 15 ハ (加算 3) | 4 点 | 月 1 回 |
| 再診時 | A001 注 19 | 2 点 | 月 1 回 |
| 外来診療料 | A002 注 10 | 2 点 | 月 1 回 |
初診時のみ加算 1/2/3 の 3 段階に分かれ、点数は施設基準の充足度で決まります (p.510-511)。再診と外来診療料は区分なしで一律 2 点です (p.511-512)。
15 …電子的診療情報連携体制整備加算として、月 1 回に限り、当該基準に係る区分に従い、次に掲げる点数をそれぞれ所定点数に加算する。…イ 電子的診療情報連携体制整備加算 1 15 点 / ロ 電子的診療情報連携体制整備加算 2 9 点 / ハ 電子的診療情報連携体制整備加算 3 4 点 (A000 注 15、p.510-511)
歯科は別建てで、電子的歯科診療情報連携体制整備加算 1 = 9 点 / 2 = 4 点 (歯科 A000 注 14)、再診 2 点 (歯科 A002 注 11) です (p.512-513)。本記事は以降、医科を中心に扱います。
旧加算からの増点幅は小さくありません。旧医療情報取得加算は初診 1 点でしたが、新加算は初診で最大 15 点 (加算 1)。一方で「3 月に 1 回 1 点」だった再診時の取得加算は、新加算では「月 1 回 2 点」に変わります。
自院は対象か — 施設基準チェック
施設基準は「三の七」(p.514〜) に定められ、加算 1 / 加算 2 / 加算 3 で要件が段階的に変わります。どこで差がつくかが、初診で 15 点・9 点・4 点のどれを取れるかを決めます。
加算 1 (初診 15 点) — 三の七(1) のイ〜ヌ をすべて満たす
加算 1 は施設基準 (1) の 10 項目 (イ〜ヌ) をすべて満たす必要があります (p.514-515)。条文の要点を箇条書きにすると次のとおりです。
- イ 電子情報処理組織の使用による請求 (= オンライン請求) を行っている
- ロ 療担規則・療担基準に規定する明細書を患者に無償で交付している (正当な理由に該当する場合の例外あり)
- ハ 電子資格確認 (= オンライン資格確認) を行う体制を有している
- ニ 電子資格確認で取得した診療情報を、診察室・手術室・処置室等で閲覧または活用できる体制
- ホ 電子資格確認に係る十分な実績を有している
- ヘ ロの体制・医療 DX 推進の体制・質の高い診療のための情報取得活用について、見やすい場所に掲示している
- ト ヘの掲示事項を、原則としてウェブサイトに掲載している
- チ マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理相談に応じる体制
- リ 電磁的記録による処方箋を発行する体制、または調剤した薬剤情報を電磁的記録として登録する体制 (= 電子処方箋関連)
- ヌ 電磁的方法により診療情報を共有し、活用する体制 (= 電子カルテ情報共有サービス等)
加算 2 (初診 9 点) — 三の七(2)
加算 2 (および歯科の電子的歯科診療情報連携体制整備加算 1) の基準は次のとおりです (p.515)。
(1)のイからチまで及びリ又はヌのいずれかを満たすものであること。(三の七(2)、p.515)
つまり、イ〜チ (8 項目) は必須で、加えてリ または ヌ のどちらか一方を満たせば加算 2 です。加算 1 との差は「リ と ヌ の両方を満たすか、片方でよいか」の 1 点に集約されます。
加算 3 (初診 4 点)・再診・外来診療料 — 三の七(3)
加算 3、医科再診料・外来診療料の加算、および歯科側の対応区分は次のとおりです (p.515-516)。
(1)のイからチまでを満たすものであること。(三の七(3)、p.515-516)
加算 3 は イ〜チ (8 項目) のみで、リ・ヌ (電子処方箋・診療情報共有) は問われません。
区分の差を 1 表で
| 区分 | 初診点数 | イ〜チ (8 項目) | リ (電子処方箋関連) | ヌ (診療情報共有) |
|---|---|---|---|---|
| 加算 1 | 15 点 | 必須 | 必須 | 必須 (リ・ヌ両方) |
| 加算 2 | 9 点 | 必須 | リ・ヌのいずれか一方 | リ・ヌのいずれか一方 |
| 加算 3 | 4 点 | 必須 | 不要 | 不要 |
差がつくのは リ (電子処方箋等) と ヌ (診療情報共有体制) の 2 項目だけ、というのが条文の構造です。イ〜チ (オンライン請求・明細書無償交付・オンライン資格確認体制・診察室での閲覧活用・実績・掲示・ウェブ掲載・マイナポータル相談) は全区分共通の土台です。
収益インパクト試算
無床診療所のモデルケースで、初診時にどの区分を取れるかによる年間差を試算します。前提は次のとおりです (試算用の仮置きであり、自院の実数で再計算してください)。
- 月間 初診 100 人 / 再診 600 人
- 加算は月 1 回 / 患者なので、初診・再診とも「のべ人数 = 算定回数」とみなす (同一患者の同月再来を考慮しない簡易計算)
- 1 点 = 10 円、患者一部負担・保険給付の按分は考慮しない (総請求点数ベース)
初診の区分による年間差 (初診 100 人/月)
| 区分 | 初診点数 | 月間 (100 人) | 年間 (×12) |
|---|---|---|---|
| 加算 1 | 15 点 | 1,500 点 = 15,000 円 | 18,000 点 = 180,000 円 |
| 加算 2 | 9 点 | 900 点 = 9,000 円 | 10,800 点 = 108,000 円 |
| 加算 3 | 4 点 | 400 点 = 4,000 円 | 4,800 点 = 48,000 円 |
加算 1 と加算 3 の差は初診だけで年間 132,000 円 (= 180,000 − 48,000 円) です。リ・ヌ 2 要件を満たせるかどうかで、この幅が動きます。
再診を加えた合計 (再診 600 人/月、一律 2 点)
| 区分 | 初診分 (年) | 再診分 (年、600 人×2 点×12) | 合計 (年) |
|---|---|---|---|
| 加算 1 | 180,000 円 | 144,000 円 | 324,000 円 |
| 加算 2 | 108,000 円 | 144,000 円 | 252,000 円 |
| 加算 3 | 48,000 円 | 144,000 円 | 192,000 円 |
再診は区分に関係なく一律 2 点なので、再診分 (年 144,000 円) は固定です。差がつくのは初診部分だけ、と読めます。なお、再診時に明細書発行体制等加算 (後述) を選んでいる場合は、再診分でこの加算を取れない点に注意が必要です。
実務の落とし穴
明細書発行体制等加算との二者択一 (診療所)
最大の注意点は、再診時に明細書発行体制等加算 (A001 注 11、診療所、1 点) と電子的診療情報連携体制整備加算 (A001 注 19、2 点) は同時に算定できないことです。条文は両方向から併算定不可を明記しています。
注 19 …電子的診療情報連携体制整備加算として、月に 1 回に限り 2 点を所定点数に加算する。この場合において、注 11 に規定する明細書発行体制等加算は別に算定できない。(A001 注 19、p.511)
注 11 …明細書発行体制等加算として、1 点を所定点数に加算する。この場合において、区分番号 A000 に掲げる初診料の注 15 及び区分番号 A001 に掲げる再診料の注 19 に規定する電子的診療情報連携体制整備加算は別に算定できない。(A001 注 11、p.511)
実務上の意味は単純です。再診時に取れるのは「明細書発行体制等加算 1 点」か「電子的診療情報連携体制整備加算 2 点」のどちらか一方。施設基準を満たせるなら、再診ごと 1 点よりも月 1 回 2 点の電子的診療情報連携体制整備加算の方が、再診回数が多い患者では有利になりやすい構図です (どちらも「月 1 回」算定なので、同一患者では月 2 点の方が大きい)。自院の患者構成で再計算してください。
初診側も同様に、A000 注 15 に「再診料の注 11 に規定する明細書発行体制等加算は別に算定できない」と明記されています (p.510)。
加算 1 の「実績」要件 (ホ) は数値が条文に書かれていない
加算 1 の施設基準ホは「電子資格確認に係る十分な実績を有していること」とあり、具体的な利用率・件数の閾値は本 PDF の条文には数値として記載されていません (p.515)。実績の具体的な基準値は、別途の告示・通知で示される範囲となります (本 PDF には数値の記載なし)。届出前に確定告示・施設基準通知での数値確認が必要です。
入院料加算側も新設 (A207-5)
外来だけでなく、入院料加算として A207-5 電子的診療情報連携体制整備加算 も新設されます。加算 1 = 160 点 / 加算 2 = 80 点、入院初日に限り算定 (施設基準は七の五、外来の三の七(1) のイ〜チ + 非常時対応体制を準用)(p.516-517)。有床診療所・病院はこちらも確認対象です。
経過措置の記載範囲
本記事の担当範囲 (p.514-520) で確認できる経過措置は、在宅医療 DX 情報活用加算 の電子カルテ情報共有サービス要件 (p.518) と、調剤報酬の電子的調剤情報連携体制整備加算 (p.520) に関するもので、いずれも「当面の間、当該基準を満たしているものとみなす」(電子カルテ情報共有サービス関連) という延長です。外来の電子的診療情報連携体制整備加算そのものに固有の経過措置は、本 PDF の該当ページには明示されていません (記載なし)。届出時期・経過措置の細目は、別途の施設基準通知で確認する必要があります。
次の改定への布石 (見立て)
ここからは条文に書かれていない見立てです。今回の統合で、初診の加算は「オンライン資格確認の実績 (ホ)」「電子処方箋 (リ)」「診療情報共有 (ヌ)」という、医療 DX の中核 3 要素に点数を寄せた形になりました (見立て)。旧医療情報取得加算 (初診 1 点) が事実上「オンライン資格確認をしているか」の確認的な加算だったのに対し、新加算は電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスの実装まで踏み込んだ施設に厚く配点しています (見立て)。
次回改定では、加算 2・加算 3 の点数差が縮小し、リ・ヌ (電子処方箋・診療情報共有) の充足が事実上の標準要件へ寄っていく可能性があります (見立て)。今のうちに加算 3 (イ〜チ) の土台を固め、電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスの導入計画を立てておくことが、次の改定で取りこぼさないための布石になります (見立て)。
参考資料
- 厚生労働省「個別改定項目について」(令和 8 年度診療報酬改定、答申 2026-02-13、施行 令和 8 年 6 月 1 日)、項目 Ⅲ-3-① 医療 DX 推進体制整備加算等の見直し、p.510-520 (印字ページ)。https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf (2026-06-11 取得)
- 同上、A000 初診料 注 15 / A001 再診料 注 11・注 19 / A002 外来診療料 注 10、p.510-512。
- 同上、施設基準「三の七」電子的診療情報連携体制整備加算の施設基準 (加算 1 = (1) イ〜ヌ、加算 2 = (2) イ〜チ + リ又はヌ、加算 3・再診・外来 = (3) イ〜チ)、p.514-516。
- 同上、A207-5 電子的診療情報連携体制整備加算 (入院料加算) 及び施設基準「七の五」、p.516-517。