特集 · 制度ウォッチ
その制度は、
義務か、お金か。
電子処方箋も、二要素認証も、電子カルテの「2030年」も、診療所への一斉の義務ではありません。クリニックと中小病院に関わる制度を、医師が一次情報で仕分けました。

01
ひと目で現在地
決まったこと、これから、やること。
決まっていること
- 2026年6月〜DX の加算が 1 本に15 / 9 / 4 点。旧加算の届出は引き継がれない
- 2026年6月〜ベースアップ評価料が増額新たに賃上げする施設は 17 / 4 点。令和6年3月比で基本給等を 5.5% 以上上げてきた施設は、届出が初めてでも 23 / 6 点
- 2026年4月施行開業の事前届出 (外来医師過多区域)指定区域で無床診療所を開くなら開設の 6 か月前まで。承継・移転も対象になりうる。指定の公表は 2026年9月19日時点で未確認
これから
- 2026年12月令和9年度の予算編成電子カルテ補助の上限が決まる見込み
- 2027年3月電子処方箋補助の導入期限 (医療機関)
- 2027年4月医療機関機能報告 (病院・有床)
- 2027年度〜二要素認証 (最初の更改時)
- 2027年6月ベースアップ評価料の引き上げ (予定)
- 2028年度地域医療構想に病院名・次の改定
- 2030年末電子カルテ普及率 約100% (政府の責務)
院長がやること
- 01 · 今月電子カルテの保守契約の満了日を確かめる
- 02 · 今月加算の区分とマイナ保険証利用率を確かめる
- 03 · 今月ベースアップ評価料の届出を確かめる
- 04 · 病院高齢者救急か急性期拠点か、院内で仮説を立てる
03
それは義務か。8つの制度を仕分ける
「義務になる」と言われる制度を、条文で確かめました。
- 義務
サイバーセキュリティ対策
全病院・診療所 (無床も)
義務中身医療法施行規則 14 条 2 項。2023年4月から管理者の義務
いつ令和8年度中に 立入検査のチェックリスト 19 項目に回答
- ガイドライン
二要素認証
医療機関
ガイドライン中身安全管理ガイドライン第7.0版。法令ではないが、立入検査で参照される
いつ令和9年4月の一斉義務はない。令和9年度以降の更改時に採用
- 義務なし
電子処方箋
医療機関
義務なし中身発行は「できる」。体制の整備は努力義務。導入期限なし
いつ国は 電子カルテの更新時に一体で 入れるよう促している
- 義務なし
電子カルテ
病院・診療所
義務なし中身「2030年末に約100%」は 政府の責務。医療機関ごとの期限ではない
いつ診療所の導入率 72.6%。国は 次の更改時にクラウド型へ 移る想定
- 義務
オンライン資格確認
保険医療機関
義務中身2023年4月から原則義務。導入はほぼ完了
いつ焦点は利用率。30% 以上が加算の条件
- 該当すれば義務
開業の事前届出
外来医師過多区域で無床診療所を開く人
該当すれば義務中身医療法 30 条の 18 の 6。怠ると 30 万円以下の過料。要請に応じないと、保険医療機関の指定が 3 年以内の期限付きになる場合がある (健保法 68 条の 2)
いつ開設日の 6 か月前まで。承継・移転も原則対象。候補 9 医療圏、指定の公表は 2026年9月19日時点で未確認
- 義務
医療機関機能報告
病院・有床診療所
義務中身改正医療法の報告義務。高齢者救急・地域急性期と急性期拠点は、1 病院で両方は報告しない
いつ2027年4月から。2028年度までに急性期拠点の病院名が構想に載る
- 義務なし
AI 医療機器・AI スクライブ
—
義務なし中身導入義務なし。薬機法の承認と保険の点数は別
いつ点数が付くのは例外。外来 AI スクライブは0点 (2026年時点)
「ガイドライン」は法令ではないが、立入検査で参照される。個別の当てはめは都道府県・地方厚生局へ。
04
入るお金、期限のあるお金
診療報酬の加算と、いま動いている補助。
診療報酬の加算届け出れば毎月入る
- 算定できる
診療所・病院
電子的診療情報連携体制整備加算
15 / 9 / 4
点 (初診・月1回)。再診は 2 点
条件はマイナ保険証利用率 30% 以上。区分は電子処方箋と情報共有の体制で決まる。新設なので届出 (様式1の6) が必要
- 算定できる
診療所・病院
外来・在宅ベースアップ評価料 (Ⅰ)
17 / 4
点 (初診 / 再診)。継続施設は 23 / 6 点
賃上げに充てるお金。医科診療所の届出は 40.3% (2025年7月)。2027年6月に引き上げ予定
補助期限と予算の段階を先に見る
- 予算の要求段階
診療所
電子カルテの乗り換え
1/2
補助 (上限は未公表)。データ移行も 1/2
対象は認証済みの電子カルテ。認証製品はまだなく、上限は年末に決まる見込み。待てるかは保守の満了日で決まる
- 期限あり
診療所・病院
電子処方箋の導入
27.1
万円まで (診療所)。院内処方機能も入れると 35.9 万円
2027年3月の導入分まで延長 (2026年9月29日の厚労省資料)。4月以降は電子カルテと一体の補助として検討中
- 申請は締切
病院 (診療所は都道府県)
賃上げ・物価上昇の支援
19.5
万円 / 床 (病院)。賃上げ分 8.4 万 + 物価分 11.1 万
病院分は 2026年6月12日に締切。残るのは報告と、6月1日からの賃上げ水準の維持 (下げると返還につながる)
- 期限あり
病院
病床数の適正化
410.4
万円 / 削減 1 床 (休床は 205.2 万円)
不要になる病床を減らす病院が対象。2027年3月末まで
IT 導入・省力化・自治体の補助は、補助金のページに
補助金のページへ05
次の電子カルテ更新に、まとめて入れる
二要素認証と電子処方箋の期限は、日付でなく更改時。見積依頼書に 5 行足せば大半が済みます。
見積依頼書に足す 5 行
- 01二要素認証端末のアプリと、院内サーバの OS のログイン。ガイドラインが更改時の採用を求める (チェックリスト ⑪⑫)出典: 安全管理ガイドライン第7.0版 システム運用編 ↗
- 02電子処方箋管理サービスとの接続国は更新時の一体導入を促している。加算 1 の要件出典: 電子処方箋・電子カルテの目標設定等について (厚労省 推進チーム 2025-07-01) ↗
- 03電子カルテ情報共有サービスへの対応加算 1 の要件出典: 保医発0305第7号 (施設基準・九州厚生局掲載) ↗
- 04標準仕様への準拠と、認証の申請予定乗り換え補助 1/2 の対象は標準仕様のクラウドネイティブ型出典: 医科診療所向け 電子カルテ・レセコン標準仕様書 第1.0版 ↗
- 05セキュリティ更新の責任の所在 (契約書に)業者に書面で委託していれば、読むガイドラインは 142 → 38 ページ出典: 同 保守委託機関編 ↗
まず保守契約の満了日
補助 1/2 はまだ要求段階。待てるかは満了日で決まる。
満了日と加算の区分を 1 枚に並べて書く。
- 2028年春以降に満了補助の上限と認証製品を待ってから選ぶ
- 2027年中に満了保守を 1 年延ばし、補助の確定を待つ
- 今年度中に更改二要素認証に対応した製品を選ぶ
分かれ目は編集部の見立て (予算成立から入れ替えまでの期間で逆算)。
06
これからの 5 年
上が国の決まり、下がお金。点線は予定・要求段階です。
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決まったこと予定・要求段階・政府の責務
07
医療DX は、どこまで進んだか
デジタル庁の公表値 (2026-09-30 更新分)。公表がないものは数字を作りません。
マイナ保険証・オンライン資格確認
運用局面69.7%
マイナ保険証利用率 · 2026年6月
診療所はどう動くか
国の目標: 2024年秋 (済) — 保険証廃止。オンライン資格確認は 2023年4月に原則義務化済導入は完了。焦点は受付での利用率。全国 69.7% を下回るなら、声かけとカードリーダーの置き場所を見直す。
電子カルテ (標準型を含む)
拡大中72.6%
導入率 (医科診療所・回答施設) · 2026年6月
目標: 約100% (2030年末)
診療所はどう動くか
国の目標: 2030年末 — 普及率 約100% (法律上の政府の責務)。無床診療所向けの標準型電子カルテは 2026年度〜本格実施回答した診療所の約 3 割が未導入。更新が近いなら、標準型や認証製品 (補助 1/2 は要求段階) が出そろう時期と、保守の満了日を並べて決める。
電子処方箋
目標未達42.5%
導入割合 (全施設種別) · 2026年8月
目標: 概ね全施設 (2025年度)
診療所はどう動くか
国の目標: 2025年度 (超過) — 概ね全ての医療機関・薬局で導入目標は未達で、2025年7月に年限のない目標 (電子カルテと一体で導入) に変わった。法的義務はない。補助は医療機関なら 2027年3月の導入分まで。
電子カルテ情報共有サービス (3文書6情報)
実測未公表未公表
国のダッシュボードに実測が未掲載
- 基盤構築
- 運用開始 (2025年度)
- 共有・対応機関の拡大
診療所はどう動くか
国の目標: 2025年度 運用開始 — 診療情報提供書・退院時サマリー交換、検査値・アレルギー等の共有を順次拡大参加状況はまだ公表されていない。電子カルテの導入・更新時は、共有サービス対応を選定の条件に入れる。
診療報酬改定DX (共通算定モジュール)
拡大中未公表
国のダッシュボードに実測が未掲載
- マスタ・点数表 改善
- α版・先行実施
- 本格実施 (2026年度〜)
診療所はどう動くか
国の目標: 2026年度〜 本格実施 — 共通算定モジュールを通じ医療機関システムをモダンシステム化、対応医療機関を拡大改定対応とレセコン維持の費用が下がる方向。次の更新前に、ベンダーへ共通算定モジュールへの対応予定を聞く。
PMH — 公費負担医療・予防接種・母子保健の自治体連携
拡大中90,150 施設
デジタル化対応 医療機関等 · 2026年8月
全国運用 (2026年度〜)
診療所はどう動くか
国の目標: 2026年度〜 全国運用 — 公費負担医療・地方単独医療費助成・予防接種・母子保健等をオンライン資格確認で連携公費の多い小児科・産婦人科で効果が大きい。自院の自治体が対応済みか確かめる。
実測は デジタル庁 医療DXダッシュボード (2026-09-30 更新分)、目標は 医療DXの推進に関する工程表〔全体像〕(医療DX推進本部・2023年6月2日)。
08
毎日の一次情報
厚労省・中医協・PMDA など 6 機関を毎朝巡回。編集部が要約したものから新しい順に。
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