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令和8年度改定 オンライン診療まわりの変更点 — 施設基準の追加要件と新設『遠隔電子処方箋活用加算』

令和8年度改定で、外来クリニックのオンライン診療(情報通信機器を用いた診療)まわりに2つの大きな変更が入った。初診料・再診料・外来診療料の施設基準にチェックリスト掲示・医療広告GL遵守・向精神薬処方時の重複投薬等チェックが追加され、新たに遠隔電子処方箋活用加算(10点)が設けられた。一次資料の条文から要件と点数を整理する。

自宅の高齢患者がタブレット越しに医師と話し、処方箋が薬局へ届くフラットイラスト
公開
2026-06-11
更新
2026-06-11
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外来でオンライン診療(条文上は「情報通信機器を用いた診療」)を行っているクリニックにとって、令和8年度改定の影響は大きく2つに分かれる。1つはすでに届け出ている施設基準に新しい遵守事項が積み増しされたこと。もう1つは電子処方箋とセットで算定できる加算が新設されたことだ。

この記事では、厚生労働省「個別改定項目について」(令和8年度診療報酬改定、答申 2026-02-13、施行 令和8年6月1日)の該当条文から、外来クリニックに関係が深い範囲だけを抜き出して整理する。在宅(D to P with N)・訪問看護まわりの新設項目も同じ章にあるが、本稿では外来初診・再診・医学管理・処方箋に絞る。

何が変わるか / 変わったか

令和8年度改定で、外来のオンライン診療に関わる変更は次の2項目だ。いずれも「Ⅲ-3-1 電子処方箋システムによる重複投薬等チェックの利活用の推進」に位置づけられている(p.521)。

  1. オンライン診療の施設基準の見直し(p.521) — 既存の「医科初診料、医科再診料及び外来診療料の情報通信機器を用いた診療に係る施設基準」に、チェックリストのウェブサイト掲示・医療広告ガイドラインの遵守・向精神薬処方時の重複投薬等チェックを追加する。
  2. 遠隔電子処方箋活用加算(10点)の新設(p.523) — 情報通信機器を用いた医学管理を算定する患者に対し、電子処方箋を発行した場合の加算を新設する。
施設基準見直しの基本的な考え方と具体的な内容
図 1: オンライン診療の施設基準見直し — 基本的な考え方と具体的な内容(出典: 厚労省「個別改定項目について」p.521、2026-06-11 取得)

改定案の条文では、施設基準(告示)に「向精神薬を適正に使用するために必要な体制が整備されていること」が新たに加わり、通知レベルで具体的な遵守事項が積み増しされている(p.521-522)。現行が「ホームページ等に向精神薬の初診処方を行わない旨を掲示」だけだったのに対し、改定後はチェックリストや医療広告GLの遵守まで求められる形だ。

自院は対象か — 施設基準チェック

対象になるのは、初診料・再診料・外来診療料についてオンライン診療の施設基準を届け出ているすべての保険医療機関だ。新規に始める場合も既存届出を継続する場合も、改定後の通知要件(p.522)を満たす必要がある。原文では以下が新たに掲げられている。

向精神薬処方時の電子処方箋管理サービスによる重複投薬等チェックと経過措置
図 2: 施設基準(通知)に追加された「カ」 — 向精神薬処方時の電子処方箋重複投薬等チェックと令和10年5月31日までの経過措置(出典: 厚労省「個別改定項目について」p.522、2026-06-11 取得)

施設基準(通知)の改定案(p.522)から、自院でチェックすべき項目を整理する。

  • エ(イ) 「情報通信機器を用いた診療の初診において向精神薬の処方は行わないこと」を当該保険医療機関のウェブサイトに掲示している
  • エ(ロ) 当該保険医療機関での対応状況を記入した「『オンライン診療指針』の遵守の確認をするためのチェックリスト」をウェブサイトに掲示している
  • 医療広告ガイドライン(「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」)を遵守している。ウェブサイト作成時は「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」を参考にしている
  • 向精神薬を処方するに当たり、電子処方箋管理サービスによる重複投薬等チェックを行っている

「カ」には経過措置がある。電子処方箋システムを有していない場合は、令和10年5月31日までの間に限り、オンライン資格確認等システム又は医療機関間で電子的に医療情報を共有するネットワークのいずれかを用いて薬剤情報を確認することでも差し支えない(p.522)。

向精神薬を処方しないクリニックでも、エ(イ)(ロ)・オの掲示要件は満たす必要がある点に注意する。「カ」の重複投薬等チェックは向精神薬を処方する場合の要件だ。

導入状況別に整理すると、実務影響は次のように分かれる。

  • すでにオンライン診療の施設基準を届出済みのクリニック — 改定後はウェブサイトのチェックリスト掲示(エ(ロ))と医療広告GL遵守(オ)を満たしているか点検が必要になる。現行は向精神薬の初診処方を行わない旨の掲示だけだったため、掲示物の追加・更新が実務上の作業になる(p.521-522)。
  • これからオンライン診療を始めるクリニック — 届出の段階から改定後の通知要件(p.522)を満たす前提で体制を組む。向精神薬を扱う場合は電子処方箋システム、扱わない場合でも掲示要件は必須になる。

収益インパクト試算

外来クリニックで直接点数として効いてくるのは、新設の**遠隔電子処方箋活用加算(10点)**だ(p.523)。

遠隔電子処方箋活用加算の点数・対象患者・算定要件
図 3: 遠隔電子処方箋活用加算(新) — 10点・対象患者・算定要件(出典: 厚労省「個別改定項目について」p.523、2026-06-11 取得)

算定要件は次のとおり(p.523)。情報通信機器を用いた医学管理を実施した場合で、月1回に限り10点を加算する。

前提
加算点数10点(= 100円、1点10円換算)
算定単位月1回
対象情報通信機器を用いた医学管理等を算定する患者

以下は前提を置いた**簡易試算(推定)**で、実際の算定回数は自院の患者構成による。

オンライン医学管理 該当患者数(月)月間点数月間概算額年間概算額
20人200点2,000円24,000円
50人500点5,000円60,000円
100人1,000点10,000円120,000円

加算自体は小さいが、算定には電子処方箋システムを発行できる体制が前提になる(後述)。単体の増収より、電子処方箋の運用に乗ることで施設基準「カ」の経過措置に依存しなくて済む点の方が実務上の意味が大きい(見立て)。

実務の落とし穴

条文に書かれている範囲で、つまずきやすい点を挙げる。

  • 算定要件の3点セット(p.523) — 遠隔電子処方箋活用加算は、ア〜ウの全てを満たした場合のみ月1回算定できる。
    • ア 電子処方箋システムにより薬剤情報を確認し、重複投薬等チェックを実施すること
    • イ 患者に対し事前に調剤する保険薬局を聴取し、当該保険薬局の電子処方箋の対応状況を確認すること
    • ウ 電子処方箋(引換番号が印字された紙の処方箋を除く)を発行すること
  • 「紙の引換番号」は対象外 — ウの括弧書きにあるとおり、引換番号が印字された紙の処方箋を発行した場合は算定できない(p.523)。電子処方箋そのものの発行が必要だ。
  • 加算の施設基準 — 「電磁的記録をもって作成された処方箋を発行する体制を有していること」(p.524)。届出(地方厚生局長等への届出)が前提になる(p.523)。
遠隔電子処方箋活用加算の施設基準
図 4: 遠隔電子処方箋活用加算の施設基準 — 電磁的記録による処方箋発行体制(出典: 厚労省「個別改定項目について」p.524、2026-06-11 取得)
  • 施設基準「カ」と加算は別物 — 初診料等の施設基準に入った「向精神薬処方時の重複投薬等チェック」(p.522)と、遠隔電子処方箋活用加算(p.523)は別の規定だ。前者は施設基準として全該当医療機関に課され、後者は届出した医療機関が条件を満たしたときに算定できる加算という関係になる。
  • 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の遵守 — 施設基準・加算とも、この指針(いわゆるオンライン診療指針)に沿った診療が前提とされている。指針の中身そのものは本改定資料(PDF)の外にあるため、ここでは名称の言及に留める。最新版の確認は別途必要。

次の改定への布石 (見立て)

今回の改定は、オンライン診療と電子処方箋を一体で運用させる方向がはっきり出ている(見立て)。施設基準「カ」の経過措置が令和10年5月31日で切れる点(p.522)を踏まえると、その時点までに電子処方箋システムを導入していないクリニックは、向精神薬処方時のチェック要件を満たせなくなる可能性がある(見立て)。

遠隔電子処方箋活用加算が10点と控えめなのも、現時点では「電子処方箋への移行を後押しする呼び水」の位置づけと読める(見立て)。次の改定で点数や対象範囲が見直される余地はあるが、これは本資料に書かれていない範囲なので断定はしない。

参考資料

  1. 厚生労働省「個別改定項目について」(令和8年度診療報酬改定、答申 2026-02-13、施行 令和8年6月1日). https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf (2026-06-11 取得). 本稿で参照したのは印字 p.521-524(オンライン診療の施設基準見直し、遠隔電子処方箋活用加算の新設)。
  2. 厚生労働省「個別改定項目について」同上、印字 p.521-522(医科初診料・医科再診料・外来診療料の情報通信機器を用いた診療に係る施設基準の改定案・現行対照)。
  3. 厚生労働省「個別改定項目について」同上、印字 p.523-524(遠隔電子処方箋活用加算の点数・対象患者・算定要件・施設基準)。