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プログラム医療機器 (SaMD) の令和8年度改定 — プログラム医療機器等指導管理料に「情報通信機器を用いた場合 78点」が新設

令和8年度改定でプログラム医療機器 (SaMD) に関係する改定は限定的。中心は『プログラム医療機器等指導管理料』にオンライン診療版 (情報通信機器を用いた場合 78点) を新設したこと。原文の点数・施設基準・併算定の整理を一次資料ベースで解説する。

聴診器と並ぶ医療アプリのスマートフォンと、承認印が押された公文書のフラットイラスト
公開
2026-06-11
更新
2026-06-11
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プログラム医療機器 (SaMD: Software as a Medical Device) は、ニコチン依存症治療補助アプリや高血圧治療補助アプリのように「プログラム自体が医療機器として承認された製品」を指す呼び方として使われる。令和8年度診療報酬改定 (答申 2026-02-13、施行 令和8年6月1日) で SaMD に関する評価がどう動いたかを、厚労省「個別改定項目について」の本文に書かれた範囲だけで整理する。

先に結論を述べる。今回の改定で SaMD に直接関係する新規項目は 1つ、すなわち「プログラム医療機器等指導管理料」に 情報通信機器を用いた場合の評価 (78点) を新設した ことが中心である。新しい治療用アプリの個別収載や、点数の大幅な引き上げといった記載は、本記事の担当範囲 (個別改定項目 該当ページ) には見当たらなかった。SaMD への言及がこの範囲では限定的だったこと自体が、現場判断の材料になる。

何が変わるか / 変わったか

改定の核心は「Ⅲ-3-2 外来、在宅医療など、様々な場面におけるオンライン診療の推進-⑦」の節にある。基本的な考え方として、原文はこう述べている。

プログラム医療機器等指導管理料が併算定できるニコチン依存症管理料や生活習慣病管理料(Ⅱ)に情報通信機器を用いた場合の規定があることを踏まえ、プログラム医療機器等指導管理料に情報通信機器を用いた場合の規定を設ける。 (個別改定項目について p.545(印字))

つまり、これまで対面でしか想定されていなかった「プログラム医療機器等指導管理料」に、オンライン診療版の点数を足したという改定である。

プログラム医療機器等指導管理料へのオンライン診療版新設の基本的な考え方
図 1: SaMD 関連改定の趣旨。情報通信機器を用いた場合の規定を新設する旨が示されている (出典: 厚労省「個別改定項目について」p.545(印字)、2026-06-11 取得)

具体的な算定要件は、新設された「注3」に書かれている。

注3 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、プログラム医療機器等指導管理料を算定すべき医学管理を情報通信機器を用いて行った場合は、所定点数に代えて、78点を算定する。 (個別改定項目について p.546(印字))

ポイントは「所定点数に代えて」78点である。情報通信機器を用いた場合は、対面の所定点数に上乗せするのではなく、78点に置き換える構造になっている。現行欄は「(新設)」なので、これは今回新たに設けられた区分である。

プログラム医療機器等指導管理料 注3 情報通信機器を用いた場合 78点の条文
図 2: 改定案 (左) と現行 (右)。注3として「情報通信機器を用いて行った場合は、所定点数に代えて、78点を算定する」が新設された (出典: 厚労省「個別改定項目について」p.546(印字)、2026-06-11 取得)

なお、対面で算定する「所定点数」そのものの点数は、本記事の担当範囲 (該当ページ) には記載がなかった。確認できたのはオンライン診療版の 78点 のみである。所定点数は告示本体の確認が必要なため、本記事では数値を断定しない。

同じ節 (⑦) では、不随意運動症に対する「在宅振戦等刺激装置治療指導管理料」にも情報通信機器を用いた場合 (705点) が新設されているが、これは脳深部刺激療法 (DBS) の遠隔プログラミングに関するもので SaMD とは別項目である。SaMD に関わるのはあくまでプログラム医療機器等指導管理料のほうである。

自院は対象か — 施設基準チェック

オンライン診療版 (78点) を算定するには、新設された施設基準「九の七の六」への届出が必要になる。原文は施設基準を (1)(2) に分けている。

  • (1) 注1の施設基準 — プログラム医療機器等の指導管理を行うにつき十分な体制が整備されていること (現行から継続する基本要件)
  • (2) 注3の施設基準 — 情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制が整備されていること (今回新設)

現行欄では施設基準が枝番のない1項目だった (プログラム医療機器等の指導管理を行う体制) のに対し、改定案では (1)(2) に分かれ、(2) としてオンライン診療体制の要件が加わった構造になっている。

プログラム医療機器等指導管理料の施設基準 九の七の六 (1)(2)
図 3: 施設基準「九の七の六」。改定案 (左) で (1) 注1の施設基準・(2) 注3の施設基準に分割され、(2) に情報通信機器を用いた診療の体制要件が新設された (出典: 厚労省「個別改定項目について」p.546(印字)、2026-06-11 取得)

自院でチェックすべき点を整理する。

  • そもそも「プログラム医療機器等指導管理料」を算定する患者がいるか (= 保険適用された SaMD を導入・処方しているか)
  • (1) プログラム医療機器等の指導管理を行うにつき十分な体制があるか
  • (2) 情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制があるか
  • 施設基準「九の七の六」を地方厚生局長等に届け出ているか

「十分な体制」の具体的な中身 (人員・設備など) は、本記事の担当範囲には条文として詳細が示されていない。実際の届出にあたっては、後日発出される通知・事務連絡の確認が必要になる。

収益インパクト試算

確認できた点数はオンライン診療版の 78点 のみであり、対面の所定点数は担当範囲に記載がなかった。そのため試算は「情報通信機器を用いた場合」に絞り、確認できた範囲だけで示す。

項目出典で確認できた点数想定算定 (例)月間概算
プログラム医療機器等指導管理料 (情報通信機器を用いた場合、注3)78点 (= 780円相当)月 20人 オンラインで実施78点 × 20 = 1,560点 (約15,600円)
プログラム医療機器等指導管理料 (対面、所定点数)該当ページに記載なし (告示本体で要確認)

前提:

  • 1点 = 10円 (医科)。患者負担割合は考慮していない総額ベース。
  • 「20人」は試算用の仮置きであり、実際の対象患者数は自院の SaMD 処方状況に依存する。
  • オンライン診療版は「所定点数に代えて」78点のため、対面とオンラインで二重に取れるものではない。

数値からわかるのは、この改定単体の収益インパクトは大きくないということである。SaMD を一定数扱っている医療機関がオンラインでも指導管理を完結できるようにする「動線整備」の改定であり、点数を取りに行く改定ではない。

実務の落とし穴

条文から読み取れる注意点を挙げる。

  • 「代えて」78点 — 注3は所定点数に代えて78点。対面の所定点数に加算する構造ではない。同一の医学管理について対面とオンラインを重複算定する想定ではない。
  • 届出が前提 — 78点を算定するには施設基準「九の七の六」(特に (2) 注3の体制要件) を満たし、地方厚生局長等への届出が必要。届出前に算定はできない。
  • 生活習慣病管理料(Ⅱ) との包括関係 — 生活習慣病管理料(Ⅱ) の包括範囲を定める条文には、区分番号B005の14「プログラム医療機器等指導管理料」が包括対象から除く項目として明記されている。すなわち生活習慣病管理料(Ⅱ) を算定する患者でも、プログラム医療機器等指導管理料は別途算定し得る (除外項目として列挙されている)。算定にあたっては最新の通知で除外項目の範囲を確認すること。
生活習慣病管理料(Ⅱ) の包括範囲からプログラム医療機器等指導管理料が除かれている条文
図 4: 生活習慣病管理料(Ⅱ) の包括範囲を定める条文。区分番号B005の14「プログラム医療機器等指導管理料」が除外項目として列挙されている (出典: 厚労省「個別改定項目について」p.288(印字)、2026-06-11 取得)
  • ニコチン依存症管理料との関係 — 基本的な考え方では「プログラム医療機器等指導管理料が併算定できるニコチン依存症管理料や生活習慣病管理料(Ⅱ)に情報通信機器を用いた場合の規定がある」とされている。SaMD のうちニコチン依存症治療補助アプリ等を扱う場面では、これらの管理料とプログラム医療機器等指導管理料の組み合わせ・オンライン要件の整合を確認する必要がある。具体的な併算定可否のルールは各管理料の本則・通知で確認すること。

次の改定への布石 (見立て)

今回の改定は、SaMD の評価を「対面のみ」から「オンラインでも完結できる」状態に揃えた整備的な改定である。新しい治療用アプリの個別収載や点数の引き上げといった攻めの改定ではなかった (見立て)。

オンライン診療版の規定が整ったことで、SaMD を処方・指導管理する医療機関がオンライン中心の運用に移行しやすくなる土台はできた (見立て)。今後、保険適用される SaMD の品目が増えれば、この指導管理料がより使われる場面が増える可能性はあるが、本記事の一次資料からは品目拡大の具体的な記載は確認できない。次回以降の改定や、施行通知・事務連絡で「十分な体制」の具体要件が示される段階を見て判断するのが現実的である (見立て)。

参考資料

  1. 厚生労働省「個別改定項目について」(令和8年度診療報酬改定)、答申 2026年2月13日、施行 令和8年6月1日。プログラム医療機器等指導管理料の改定 (情報通信機器を用いた場合 78点・施設基準 九の七の六): p.545〜546(印字)。生活習慣病管理料(Ⅱ) 包括範囲におけるプログラム医療機器等指導管理料の除外: p.288(印字)。URL: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf (2026-06-11 取得)