1床19.5万円の補助、返さずに済むのか
令和7年度補正の賃上げ・物価支援 (病院1床19.5万円) は申請が締め切られました。残るのは実績報告と、6月1日からの賃上げの維持です。返還につながる5つの入口、自院での検算、2026年10月時点で受付中の府県の独自支援を一次資料で整理します。
執筆・監修 クリニックAIラボ 編集長(現役内科医)

- 公開
- 2026-10-07
- 更新
- 2026-10-07
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はじめに——申請はもう締め切られている
「あの1床19.5万円、うちはもう片付いたのか」。この秋、理事長からそう聞かれて、すぐには答えられない事務部長もいるのではないでしょうか。申請の季節は終わり、入金も済んだ。それでも落ち着かないのは、受け取った後に何が求められるのかが、申請のときほど語られていないからです。
先に事実を置きます。令和7年度補正予算の「医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援事業」は、病院分の申請受付を 2026年6月12日に締め切りました [4]。厚生労働省のページに再受付の記載はありません [4]。
診療所・薬局・訪問看護ステーションの分は、都道府県が受け付けました。編集部が確認できた 18 都道府県では、2026年10月7日時点で受付中のところはゼロです [13][14][15]。ただし、国のこの事業とは別に、府県が独自に配る物価高騰の支援金には、同日時点でまだ受け付けているものがありました。後半で一覧にします。
ですから、この記事は「取り切る」ための記事ではありません。受け取った補助を返さずに済ませるための記事です。
もう一つ、受け取った病院ほど気づきにくい事実があります。補助が賄ったのは、2025年12月から2026年5月までの半年分のベースアップ (基本給や毎月の手当の引き上げ) です。一方で、上げた賃金は6月1日以降も、原則として維持することが要件になっています [1]。
半年分のお金で、ずっと続く賃上げを始めたことになります。
この記事の順番はこうです。①19.5万円を二つの財布に分ける。②返還につながる条件を条文で押さえる。③自院の受取額と賃上げの充当を検算する。④6月から先の穴をどう埋めるか、府県の独自支援とあわせて考える。結論から言うと、返還を避ける鍵は2つです。補助を半年間の賃金改善に充て切ったこと。そして、6月1日からその水準を続けていることです。患者数の影響で水準が下がった分については、補助を賃金改善に充てていれば返還は不要と厚労省の Q&A は答えています [3]。なお、5月までに賃上げの効果を打ち消す目的で他の賃金項目を下げると、全額返還の場合があります [3]。
私は、この記事の本当の宿題はその先にあると考えています。
19.5万円は二つの財布でできている
1床19.5万円は、一つのお金ではありません。
性質の違う二つの財布を、同じ封筒に入れて届けたものです。一つめは 賃上げの財布 で、1床あたり8.4万円。二つめは 物価の財布 で、1床あたり11.1万円です。この単価は補正予算案の段階で示され [5]、実施要綱でそれぞれこう定められました。
「賃上げに必要な経費として許可病床数(※)×84 千円を支給する。」(厚生労働省 実施要綱 令和7年度 1.(5) p.2、2026-10-07 取得) [1]
「本事業の支給額は、病院の許可病床数に 111 千円を乗じた額に、下表に記載する①救急に対応する病院への加算、②全身麻酔手術を行う病院への加算、③分娩を行う病院への加算(いずれも併給不可。)のいずれか高い加算額を加えた額とする。」(同 2.(4) p.5) [1]
許可病床数は、稼働している病床ではなく、医療法で使用の許可を受けた病床の数です。引用中の「※」は、2025年8月1日時点の数を使うという注記です [1]。
賃上げの財布は、何のためのお金かが交付要綱に書かれています。目的は「従事者の賃金を3%分・半年間引き上げられる規模」の措置です [2]。
外来の言葉に置き換えるなら、賃上げの財布は 麻薬の帳簿 に近い。受け取った量と使った量を、後で照らし合わせられるお金です。物価の財布は 院内の消耗品費 に近い。病院を回すための経費に充ててよく、何にいくら使ったかを一つずつ報告する必要はありません。厚労省のページも、物価分について「給付金の使途については、申請・報告は不要です」と明記しています [4]。

返還の話が出てくるのは、ほぼ賃上げの財布の側です。物価の財布にも廃院や不正のときの返還規定はありますが [1]、使い道を理由に返せと言われる構造にはなっていません。
データの読み方 — 「1床あたり」は配分のものさし
1床19.5万円と聞くと、病床1つを動かす費用の補助のように聞こえます。実際の賃上げの財布は、上で見たとおり職員の賃上げのためのお金です。それを病床数で配っているのは、病床数が国の手元にある、確かめやすい規模の指標だからだと考えられます (推定)。その結果、1床あたりの職員が多い病院ほど職員1人あたりの額は薄くなり、少ない病院ほど厚くなります。「1床あたり」の数字は、自院の職員数で割り直して初めて意味を持ちます。
私はこの二つの財布を、同じ年度の収入として一緒に眺めないことを勧めます。片方は約束つきのお金、片方は約束のないお金だからです。先生の病院の決算書では、この補助金収入が一行にまとめて計上されていないでしょうか。
——自院に置き換えると、まず決算の補助金収入の内訳を、賃上げ分と物価分の二行に分けて書き出してください。後の検算はすべてこの二行から始まります。消費税の上でも二つの財布は扱いが異なると整理されています。決算の前に顧問税理士と確かめてください [4]。
条文で確かめる「返す」条件
では、どんなときに返すことになるのか。実施要綱が定める賃上げ分の要件は、次の一文に集約されます。
「原則として、本事業の支給額を活用して令和7年 12 月から令和8年5月までの間、対象職員のベースアップ(基本給又は決まって毎月支払われる手当の引き上げ。以下同じ。)を実施するとともに、令和8年6月1日から当該ベースアップの水準を維持又は拡大すること。」(実施要綱 令和7年度 1.(7) p.3) [1]
要件は二段です。
半年間ベースアップをすること。そして6月1日から、その水準を維持すること。繰越分として令和8年度に申請した病院も、要件は同じです [4][16]。なお、2026年3月までに4か月分を一時金や特別手当で支給する方法も認められています。その場合も、4月と5月はベースアップを行い、6月1日からのベースアップは必須です [1]。
実施要綱は、実績報告でこの両方を確かめると書いています。「6月1日からベースアップを実施したことを確認する」としたうえで、支給額の全部が上の要件に充てられているかを確認します [1]。充てられていなかった場合は、その分を減額して返還を求めます [1]。

ただし、6月以降の水準については救済があります。Q&A は、患者数などの影響で6月以降の賃金改善の水準が補助期間の水準を下回った場合について、「本事業の給付金を賃金改善に充てていれば返還は不要です」と答えています [3]。理由として挙げているのは、ベースアップ評価料の収入が患者数で変動することです [3]。
ベースアップ評価料は、職員の賃上げのための診療報酬の点数で、算定した収入は対象職員の賃上げに充てる決まりです。患者数が減ればこの収入も減るので、その影響で下がった分までは返還で問わない、という設計です。
一方、Q&A が救済しているのは患者数などの影響による低下だけです。患者数と関係なく意図的に水準を下げた場合を救う記載は、要綱にも Q&A にもありません。実績報告では、6月1日からのベースアップが確かめられます。だから、意図的な引き下げには返還を求められる余地が残ると私は読んでいます (見立て)。
なお、基本給の引き下げは補助の要件とは別に、労働条件の不利益変更として労働契約法の制約を受けます (第9条) [23]。水準の見直しを考える場合は、社会保険労務士など専門家に先に相談してください。
全額の返還になりうる場面は、ほかに3つあります。
- 正当な理由のない廃院 (事業譲渡で診療が続くなど、厚生労働大臣がやむを得ないと認めた場合は例外) [1]
- 不正受給 [1]
- 2026年5月までに、賃上げの効果を打ち消す目的で他の賃金項目を下げた場合。Q&A は「支給額の全額の返還を求める場合があります」と書いています [3]
実務で最も手前にあるのは、賃金改善の実績報告です。病院の場合、厚労省の申請システムのマイページから直接入力します [4]。実施要綱上の名称は「賃金改善報告書」です [1]。交付要綱は、2026年8月1日までに厚生労働大臣へ提出することを定めています [2]。一方で、厚労省のページは運用をこう書いています。
「8月1日までの報告をお願いしておりますが、難しい場合は8月1日以降であっても順次、報告をお願いします。」(厚生労働省「医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について」、2026-10-07 取得) [4]
8月1日を過ぎた後の、新しい締め切りの日付は書かれていません [4]。
先生の病院では、この報告がもう出ているでしょうか。事務に任せきりで、先生ご自身は確かめた記憶がない、ということもあるかもしれません。

まとめると、返還につながる入口は5つです。
- 賃上げ分を充て切れなかったとき: 足りない分を返還 [1]
- 6月1日からの水準を、患者数と関係なく下げたとき: 返還を求められる余地が残る (見立て)
- 5月までに、効果を打ち消す目的で他の賃金項目を下げたとき: 全額返還の場合あり [3]
- 正当な理由のない廃院・不正受給: 全額返還 (不正受給は加算金の対象にもなりえます) [1][24]
- 実績報告を出さないとき: 交付決定の取消し・返還の根拠になりうる [2][24]
報告の提出は、交付要綱で「提出しなければならない」と定められた義務です [2]。この補助金には補助金適正化法 (補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律) が適用され [2]、義務に反した場合は交付決定の取消しと返還命令の根拠になりえます (同法第17条第1項・第18条第1項) [24]。取消しによる返還には、受け取った日からの加算金 (年10.95%) の規定もあります (同法第19条第1項) [24]。
もっとも、厚労省は8月1日以降の報告も順次受け付けると案内しています [4]。北海道の診療所向けの事業は、延長した期限を過ぎた実績報告について「受付できず、全額返還となります」と明記しています [14]。未提出なら、まず出す。それが最も安い対処です。
証拠書類の扱いも押さえておきます。交付要綱 (令和7年度からの繰越分の版) は交付の条件として、帳簿と証拠書類を「本補助金の額の確定の日…の属する年度の終了後5年間保管しておかなければならない」と定めています [2]。また、交付を受けた医療機関は、厚労省の調査への協力の求めに応じなければなりません [2]。
——自院に置き換えると、今週やることは1つです。申請システムのマイページで、賃金改善報告書が提出済みになっているかを、事務部長と一緒に先生ご自身の目で確かめてください。
自院の数字で検算する
条文の次は、自院の数字です。受取額と、賃上げに充てるべき額を、一本の式で並べます。
受取額 はこうなります。
- 賃上げ分 = 許可病床数 (2025年8月1日時点。病床数適正化支援事業で同年8月2日以降に削減した分を除く) × 8.4万円 [1]
- 物価分 = 許可病床数 × 11.1万円 + 加算 (救急・全身麻酔・分娩のうち最も高い1つ) [1]
加算は件数で段階が決まり、救急車の受入れが年1件以上1,000件未満なら1施設500万円です [1]。件数は、毎年都道府県に出している病床機能報告の、令和6年度分か令和7年度分の高いほうを使います [1]。
充当すべき額 は、賃上げ分の支給額と同額です。数えてよいものと、数えてはいけないものがあります。
数えてよいのは、基本給や毎月の手当の引き上げと、それに連動して上がる賞与・時間外手当です。病院が負担する社会保険料など、法定福利費の事業主負担の増加分も数えられます [1][3]。事業主負担分は「(基本給等+賞与+時間外手当の引き上げ分)×16.5%で簡便に計算することもできます」と Q&A にあります [3]。一方、定期昇給による上昇や、診療報酬・他の補助金を財源とする部分には「充てることはできない」とされています [1]。

仮の病院で通しで計算してみます。数字はすべて説明のための例です。
許可病床120床のケアミックス病院で、救急車の受入れが年800件、ベースアップの対象職員が160人とします。三次救急ではなく、全身麻酔・分娩の加算にも届かない前提です。
- 賃上げ分: 120床 × 8.4万円 = 1,008万円
- 物価分: 120床 × 11.1万円 = 1,332万円 + 救急加算500万円 = 1,832万円
- 合計: 2,840万円
賃上げ分の1,008万円を、6か月で充てる計算はこうなります。
- 月あたり: 1,008万円 ÷ 6か月 = 168万円 (事業主負担込み)
- 基本給だけを上げた場合の引き上げ額: 168万円 ÷ 1.165 ≒ 月144万円 (Q&A の簡便法)
- 1人あたり: 144万円 ÷ 160人 ≒ 月9,000円
この病院では、1人月9,000円ほどのベースアップを半年続けて、ようやく補助と釣り合います。
私はこの数字を、職員が給与明細で実感できる幅の昇給だったと読んでいます (見立て)。実感できた昇給を半年後に戻すのは、要件の前に、職場の信頼の問題になります。
先生の病院の数字に置き換えると、1人あたり月いくらになるでしょうか。事業主負担まで含めた賃金改善の合計が、賃上げ分の支給額に届いているか。届いていなければ、届かない分が「充てられていなかった」部分として返還の対象になりえます [1]。
一つ、見落としやすい救済があります。2025年3月31日時点と比べて、同年4月にすでに大きくベースアップしていた病院です。Q&A の扱いはこうです。
- 2025年3月31日時点より2.0%を超えてベースアップし、それを12月以降も続けていれば、超えた部分に支給額を充ててよい
- 例: 3.5%を続けていた場合は「1.5%分×6ヶ月×対象職員数に本事業の支給額を充てることができます」[3]
- 2.0%までの部分には、ベースアップ評価料による賃金改善分も含まれているとみなされる。2.0%を上回る部分に評価料の分が含まれていれば、その分は除く [3]
- それでも支給額が余る場合は、余った分を別に賃金改善に充てる [1]
根拠の規定は実施要綱にあります [1]。ここは自院の賃金台帳で一人ずつ確かめる作業です。給与計算を委託している社会保険労務士と一緒に進めると確実です。

そして、ここからがこの記事の本題です。同じ月168万円のベースアップを、6月1日から1年続けてみます。168万円 × 12か月で 2,016万円 です。補助が賄った額のちょうど2倍で、補助の計算と同じく事業主負担込みの額です。
補助は半年で終わりました。
賃上げは、要件どおりなら終わりません。6月からは、この2,016万円のうちベースアップ評価料で賄えない分が自院の負担になります。
——自院に置き換えると、次の理事会に出す資料は1枚で足ります。「補助で賄った額」と「6月以降も続く年額」を、同じ表の左右に並べてください。
6月から先の穴をどう埋めるか
では、6月以降の賃上げは誰が払うのか。国の設計では、ここから先は診療報酬が担う形になっています。
令和8年度の診療報酬改定は、2026年6月から適用されています (たとえば入院時食費の見直しは「令和8年6月1日施行」です [7])。職員の賃上げの目標は「令和8年度:+3.2% 令和9年度:+3.2% (看護補助者・事務職員は+5.7%)」で、ベースアップ評価料も見直されました [6]。物価については、基本診療料に併せて算定する「物価対応料」が新設されています [7]。
実施要綱は、ベースアップ評価料の対象にならない職種に配った分について、6月以降の財源を次のように書いています。
「当該職種が令和8年度診療報酬改定による見直し後のベースアップ評価料の対象とならない場合(※)、当該職種の令和8年6月以降のベースアップのための特別の財源は措置されない点に留意すること。」(実施要綱 令和7年度 1.(8)① p.4) [1]
つまり、補助は半年分の橋渡しで、6月からはベースアップ評価料に引き継ぐ。これが国の描いたバトンです。私が気になるのは、評価料の収入は患者数で動くのに、上げた賃金は動かないことです (見立て)。患者が減れば、バトンの受け手が細くなります。
先生の病院では、6月以降のベースアップ評価料の月額が、仮の病院でいう月168万円のうち何割を埋めているでしょうか。
なお、ベースアップ評価料の側にも報告があります。評価料の令和7年度分の実績報告書と、令和8年度分の中間報告書です。補助の実績報告とは別物で、提出先も地方厚生局です。厚労省の特設ページは、2026年9月1日の事務連絡を受けた案内を出しています。やむを得ず期限を過ぎた場合は「可及的速やかに地方厚生(支)局へ提出するようにお願いいたします」とのことです [8]。
次に、補助がもう一度来るのかどうか。2026年7月21日に閣議決定された骨太の方針2026は、「今秋以降に補正予算が必要となる場合であっても、真に緊要性の高い施策に限定する」と書きました [9]。
医療については、「経済・物価の動向が2026年度診療報酬改定時の見通しから大きく変動し、医療機関等の経営状況に支障が生じた場合には、令和9年度予算編成過程で診療報酬上の加減算を含む更なる必要な調整を行う」としています [9]。令和9年度の概算要求も、この調整は金額を示さず「予算編成過程において検討する」とするにとどまります [10]。
2026年5月に表明された令和8年度の補正予算の会見にも、医療機関向けの賃上げ給付は出てきません。語られたのは、予備費の復元・創設と、国が自治体に配る重点支援地方交付金の追加です [12]。
編集部の先読み
この冬に、国から同じ形の「1床いくら」の給付がもう一度配られる可能性は低いとみます。次の手当てが来るとすれば、年末の令和9年度予算編成で決まる診療報酬の調整として、2027年度に入ってから効いてくる形になるでしょう。根拠: 骨太2026 が補正予算を「真に緊要性の高い施策に限定する」とし、医療の追加調整の手段として「診療報酬上の加減算」を名指ししている (出典 [9])。
厚労省は、約12,000施設を無作為に選んで経営状況の臨時調査を行っています。2026年9月14日には対象施設向けの専用ページを開設しました [11]。対象に選ばれていたら、回答の期限を事務と確認してください。自院の経営状況を数字で国に伝える機会になります。
2026年10月時点の府県の支援
国の事業は締め切られました。ただ、府県が国の重点支援地方交付金などを使って独自に配る、物価高騰の支援金は別です。編集部が2026年10月7日に各府県の公式ページで確認できた範囲では、病院が申請できるものが次のとおり残っていました (締切の早い順)。
| 府県 | 病院への支給 | 締切 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 滋賀県 | 1床3万円 | 10月16日 17時必着 | [18] |
| 大阪府 | 1床7,500円 (別に食材料費分として1床3,200円) | 10月30日 18時 | [17] |
| 新潟県 | 対象経費の2分の1 (上限は1床8,500円) | 10月30日 必着 | [19] |
| 埼玉県 (LPガス) | 1床1.2万円 | 11月30日 | [20] |
| 埼玉県 (特別高圧電力) | 1床5.2万円 | 11月30日 | [21] |
締切や単価は変わることがあります。申請の前に必ず各府県のページで最新の情報を確かめてください。締切を過ぎた行は、本記事の更新時に記録として残します。
表の注です。新潟県の対象経費は、2026年4月1日から9月30日までに支出した設備補修・消耗品・委託などの経費で、光熱費そのものは含まれません。収支の減少などの要件もあり、国・県・市町村の他の補助金の対象になった経費は除かれます [19]。埼玉県のLPガスは、LPガス以外も使う施設では使用割合で単価が補正されます [20]。特別高圧電力は、電気の契約が特別高圧の施設だけが対象です [21]。
仮の120床病院に当てると、滋賀県なら360万円、大阪府なら1床7,500円の部分だけで90万円です。年2,016万円の賃上げに比べれば小さい額です。それでも、申請の手間に見合う額だと私は考えています (見立て)。
国の補助と併せて受け取れるかについて、滋賀県は Q&A で、県が実施した「医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業」等で支援金を受給している場合でも「今回の支援金を受給することが可能です」と答えています [22]。国が病院に直接給付した分を名指しした記載ではありませんが、同じ事業の支援金なので、病院も併せて受け取れると私は読んでいます (見立て)。申請の前に、県の担当課へ「国から直接給付を受けた病院も対象か」を一本確かめてから出すのが安全です。ほかの府県は、要綱で確かめてください。4府県以外にも、市単位の事業や対象の狭い事業があります。編集部は全国を確認できていないので、自院の所在地の府県・市のページも開いてみてください。
——自院の所在地がこの4府県なら、今週中に担当課のページを開き、締切と必要書類を確かめてください。滋賀県の締切は2026年10月16日 17時必着です。
物価の財布の使い道
では、物価の財布はどう使うか。こちらは使途の報告が要りません [4]。光熱費や材料費の支払いに充てても構いません。
ただ、一度きりのお金で、ずっと続く支出の穴は埋まりません。仮の病院でいえば、物価分の1,832万円は、6月以降1年分の賃上げ額2,016万円にも届きません。
実際の穴は、この年額そのものではありません。年額から、6月以降のベースアップ評価料の収入を引いた差額です。自院の評価料の月額を当てて、差額を計算してください。
一度きりのお金の使い道として筋がよいのは、ずっと続く支出のほうを小さくする投資だと私は考えています (見立て)。たとえば光熱費を下げる設備の更新、委託費や残業の見直し、記録や書類の時間を減らす仕組み (音声入力・AIによる記録支援など) です。どれも、効果はベンダーの数字ではなく自院の数字で見積もる必要があります。その手順は AIスクライブの投資対効果の記事 に、人件費率で自院の体力を測る方法は 人件費率の記事 にまとめています。
ここまでは資料で言えます。ここからは、まだわかりません。次の改定までの間に患者数がどう動くか、診療報酬の調整がどの程度になるかは、年末の予算編成を待つしかありません。
——自院に置き換えると、物価分の使い道を決める会議では「この支出は来年もかかるか」を1行ずつ問うてください。来年もかかるものを補助で払うのは、穴埋めです。来年の支出を減らすものに使うのが、投資です。
おわりに——いまやることは3つ
1床19.5万円の申請は終わりました。残っているのは、受け取った後の約束です。
いまやることは3つです。
- 今週中に、事務部長と一緒に、申請システムのマイページで賃金改善報告書が提出済みかを確かめる [4]
- 今月中に、給与担当と、6月1日以降のベースアップの水準が下がっていないかを確かめる [1]
- 今月中に、ベースアップ評価料側の報告が出ているかを、地方厚生局への提出記録で確かめる [8]
滋賀・大阪・新潟・埼玉の病院は、これに加えて府県の独自支援の締切を確かめてください [17][18][19][20][21]。
診療所の先生方も、多くは窓口が都道府県になるだけで、構造は同じです。実績報告の期限は都道府県ごとに違います。たとえば北海道は10月30日 (必着・消印有効) まで延長しています。それを過ぎた報告は受け付けず、全額返還になると明記しています [14]。まずは自院の都道府県の担当課のページで、期限を確かめてください。
振り返ると、この補助は6月から続く賃上げの前払いでした。私はそう受け止めています。クリニックAIラボでは、年末の予算編成で診療報酬の調整が決まった時点で、この記事の「次の一手」を一次資料で更新します。
参考文献
- 厚生労働省医政局・医薬局「令和7年度 医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援事業の実施について」実施要綱 (医政発0126第67号・医薬発0126第1号、令和8年1月26日). https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001643278.pdf (2026-10-07 取得)
- 厚生労働省「令和8年度(令和7年度からの繰越分)医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援事業費補助金交付要綱」(令和8年4月1日). https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001647332.pdf (2026-10-07 取得)
- 厚生労働省「令和7年度 医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援事業に関するQ&A(第1版)」(令和8年2月27日). https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001663238.pdf (2026-10-07 取得)
- 厚生労働省「医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について」. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69485.html (2026-10-07 取得)
- 厚生労働省医政局「令和7年度補正予算案について(報告)」第122回社会保障審議会医療部会 資料3 (令和7年12月8日). https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001606326.pdf (2026-10-07 取得)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要 1.賃上げ・物価対応(賃上げ)」. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001745824.pdf (2026-10-07 取得)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要 2.賃上げ・物価対応(物価対応)」. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001672521.pdf (2026-10-07 取得)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」特設ページ (2026年9月2日更新). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html (2026-10-07 取得)
- 「経済財政運営と改革の基本方針2026」(令和8年7月21日閣議決定、内閣府掲載). https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2026/2026_basicpolicies_ja.pdf (2026-10-07 取得)
- 厚生労働省「令和9年度予算概算要求の概要」. https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/27syokan/dl/01-01.pdf (2026-10-07 取得)
- 厚生労働省「令和8年度医療機関等の経営状況に係る臨時調査について」(2026年9月14日). https://www.mhlw.go.jp/topics/2026/09/tp0914-1.html (2026-10-07 取得)
- 首相官邸「中東情勢を踏まえた令和8年度補正予算等についての会見」(2026年5月25日). https://www.kantei.go.jp/jp/105/statement/2026/0525kaiken.html (2026-10-07 取得)
- 千葉県「千葉県医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援について【申請受付終了しました】」. https://www.pref.chiba.lg.jp/iryou/houjin/chinage-bukka.html (2026-10-07 取得)
- 北海道「医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援事業について」. https://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/iyk/246513.html (2026-10-07 取得)
- 神奈川県「物価高騰による医療機関等に対する支援について」. https://www.pref.kanagawa.jp/docs/t3u/f533/2bukkakoutou.html (2026-10-07 取得)
- 厚生労働省医政局・医薬局「令和8年度(令和7年度からの繰越分)医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援事業の実施について」実施要綱 (医政発0226第11号・医薬発0226第2号、令和8年2月26日). https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001667380.pdf (2026-10-07 取得)
- 大阪府「大阪府医療機関等物価高騰対策一時支援金について」(2026年9月25日更新). https://www.pref.osaka.lg.jp/o100020/hokeniryokikaku/subvention/bukkakoutou.html (2026-10-07 取得)
- 滋賀県「令和8年度医療機関等物価高騰対策支援金(医療機関等および薬局)について」(2026年9月29日更新). https://www.pref.shiga.lg.jp/ef00/32214.html (2026-10-07 取得)
- 新潟県「新潟県医療機関・社会福祉施設光熱費等高騰対策緊急支援事業補助金の交付申請受付を開始します」(2026年9月9日更新). https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/fukushihoken/setubihosyuu.html (2026-10-07 取得)
- 埼玉県「埼玉県医療提供施設等光熱費高騰対策支援金(LPガス)」. https://www.pref.saitama.lg.jp/a0704/r8lpgas/lpgas.html (2026-10-07 取得)
- 埼玉県「埼玉県医療提供施設等光熱費高騰対策支援金(特別高圧電力)」. https://www.pref.saitama.lg.jp/a0703/kounetuhi-tokubetukouatu.html (2026-10-07 取得)
- 滋賀県「医療機関等物価高騰対策支援金(医療機関等および薬局)にかかるQ&A」. https://www.pref.shiga.lg.jp/documents/32214/20260929114624.pdf (2026-10-07 取得)
- 労働契約法 (平成19年法律第128号) 第9条・第10条. https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128 (2026-10-07 取得)
- 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 (昭和30年法律第179号) 第14条・第17条・第18条・第19条. https://laws.e-gov.go.jp/law/330AC0000000179 (2026-10-07 取得)
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