カテゴリ 医療情報セキュリティ / OS のサポート終了・Windows 10 延長更新 (ESU)

Windows 10のカルテPC、延長更新を続けるのか

Windows 10 の延長更新 (ESU) の1年目は2026年10月13日まで。2年目に進むか、Windows 11 へ移るか。半田病院の調査報告書と Microsoft・厚労省の一次資料から、院内のパソコンを今日数え、4つの質問で1台ずつ決める手順と、電子カルテ会社への質問文を示します。

執筆・監修 クリニックAIラボ 編集長(現役内科医)

診療前の朝、受付カウンターに並んだ数台のパソコンのうち1台のパソコンを院長が覗き込み、隣で事務長が指で台数を数えながらクリップボードの表に印をつけているフラットイラスト。窓の外に朝の里山が見える
公開
2026-10-12
更新
2026-10-12
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この記事で学べること

  • 延長更新 (ESU) の1年目は2026年10月13日まで——組織向けは1年ごとで最長3年、料金は年ごとに2倍
  • 「Windows 10」は1種類ではない——オンライン資格確認の端末などの LTSC は ESU の対象外で、期限が別
  • 延長は橋渡し——延長する PC にも、Windows 11 へ移る日付を決めておく

読み終えたら、まずこれ

院内のパソコンをすべて書き出し、Windows 10 の台数と保守している会社を1枚の表にする

目次Index

はじめに——カルテは今日も普通に動いている

「Windows 10 のサポートが終わったのは去年の話。カルテは今も普通に動いている」。そう感じている先生は多いと思います。

その感覚は正しいのです。Windows 10 のサポートは 2025 年 10 月 14 日に終わりましたが、パソコンはそのまま動き続けます[3]。

止まったのは、弱点を直す更新です。サポートの終わった Windows 10 で更新を受け取り続けるには、Microsoft の有料の延長プログラムに登録する必要があります[2][3]。拡張セキュリティ更新 (ESU: Extended Security Updates) といい、修繕だけを有料で延ばしてもらう契約です。医療機関などの組織向けは 1 年ごとの契約で、1 年目の期間は 2026 年 10 月 13 日 (米国時間) までです[2]。

1 年目に登録していた先生は、2 年目に進むかを決める時期に来ています。登録していなかった先生のパソコン (後で説明する LTSC という特別な種類を除く) には、2025 年 11 月以降、Windows の修繕が届いていないことになります[3]。

この記事では、院内の Windows 10 のパソコンを今日数え、4 つの質問で「Windows 11 へ移る」「延長をもう 1 年続ける」「当面は外とのつながりを減らす」のどれにするかを 1 台ずつ決める手順をお伝えします。電子カルテ会社に送る質問文と、印刷用のチェックシートも付けました。

この記事で決めることは 1 つです。院内の Windows 10 のパソコンを、それぞれいつまで使うか。

そもそも「OS の更新」とは

本題の前に、OS (オペレーティングシステム) とその更新を建物にたとえておきます。

OS は建物、更新は毎月の修繕

パソコンの OS は、電子カルテやレセコン (診療報酬の請求に使うコンピューター) のソフトが入居している建物です。Windows 10 や Windows 11 がこれにあたります。

建物には、ときどき設計の欠陥 (脆弱性) が見つかります。鍵の甘い勝手口のようなものです。Microsoft は見つかった欠陥を直す修繕 (セキュリティ更新) を、毎月まとめて配っています。

サポート終了は、管理会社が修繕をやめた状態です。建物はそのまま使えますが、新しく見つかった欠陥は直りません[3]。ESU は、修繕だけを有料で延ばしてもらう契約です。新しい機能や、使い方の問い合わせ (技術サポート) は付きません[3]。

Windows 10のサポート期間が2025年10月14日に終わり、その後に延長の1年目(2026年10月13日まで、61ドル)、2年目(2027年10月12日まで、122ドル)、3年目(2028年10月10日まで、244ドル)が階段状に高くなって並ぶ時間軸。1年目の終わりにいまここの旗がある
図 1: Windows 10 のサポートと延長 (ESU) の時間軸 (「いまここ」は 2026 年 10 月 12 日時点)。組織向けの延長は 1 年ごとで最長 3 年、料金は年ごとに 2 倍。2 年目・3 年目の金額は「2 倍」の規則から編集部が計算 (出典: Microsoft Lifecycle FAQ、Microsoft Learn を基に編集部作成。日付は米国時間)

組織向けの ESU は最長 3 年です。1 年目が 2026 年 10 月 13 日まで、2 年目が 2027 年 10 月 12 日まで、3 年目が 2028 年 10 月 10 日まで (いずれも米国時間)[2]。料金は 1 台 1 年目 61 米ドルで、年ごとに 2 倍になります[3]。

「Windows 10」は 1 種類ではない

同じ Windows 10 でも、エディション (種類) によって期限が違います。建物でいえば、事務所用か住宅用か、という違いです。ここを取り違えると、急がなくてよい PC を慌てて替えたり、急ぐべき PC を見落としたりします。

  • Pro・Enterprise・Education: 業務用。2025 年 10 月にサポートが終わりました。業務で使うこの 3 種類が、組織向け ESU の対象です[2]
  • Home: 家庭向け。家電量販店で買った PC に多い種類です。組織向け ESU の対象に挙がっていません[2]。個人向けの ESU はありますが、Microsoft は「商用シナリオでは使用できず」としています[5]
  • LTSC (Long-Term Servicing Channel、長期サービスチャネル): 医療機器など特定の用途に向けた、更新が長く続く特別な種類。ESU の対象外で、それぞれ独自の期限まで更新が続きます[4]
LTSC の種類更新が続く期限 (米国時間)[6]
Enterprise LTSC 2019 / IoT Enterprise LTSC 20192029 年 1 月 9 日
Enterprise LTSC 20212027 年 1 月 12 日
IoT Enterprise LTSC 20212032 年 1 月 13 日

オンライン資格確認 (マイナ保険証の読み取り) の端末は、この LTSC が推奨されています。厚労省が推奨する仕様は、資格確認端末の OS として Windows 10 の LTSC 版 (2019・2021) と Windows 11 の LTSC 版 (2024) を挙げています。それ以外の OS を選ぶ場合は、医療機関の側で必要な対策をとり、システムの会社が更新を適切に当てる、という条件が付いています[7]。

パソコンのどこを見ればわかるか

種類と版は、各パソコンの「設定」→「システム」→「バージョン情報」で確かめられます。見るのは「エディション」(Pro・Home など) と「バージョン」の 2 か所です。

バージョンは、建物でいえば改築の世代です。22H2 は Windows 10 の最後の世代 (2022 年後半版) で、ESU の更新を受け取れるのはこの世代だけです[3]。画面に 22H2 と出なければ、台帳の備考に「22H2 でない」と書き、後の質問文と一緒に保守の会社へ伝えます。

ノートパソコンの画面に簡略化した設定画面が表示され、設定、システム、バージョン情報の中のエディション(Windows 10 Pro)とバージョン(22H2)の2行が緑の枠で囲まれ、種類と22H2かを見ると吹き出しで示した図
図 2: パソコンの「設定」→「システム」→「バージョン情報」で見る 2 か所。エディションとバージョンを台帳に写す (編集部作成。実際の画面の配置は版で異なる)

院長や事務が見るのはこの画面までにしてください (編集部の推奨)。設定を変えたり、更新を手で止めたり進めたりはしません。電子カルテの動作に関わるので、作業は契約している会社に頼みます。

更新を止めていた病院

2021 年 10 月末、徳島県のつるぎ町立半田病院が、ランサムウェア (データを暗号化して身代金を要求する攻撃) の被害を受けました。電子カルテが使えなくなり、通常診療の再開は約 2 か月後の 2022 年 1 月 4 日でした[1]。

有識者会議の調査報告書は、院内のパソコンの状態をこう書いています。

「グループポリシーによって、Windows アップデートを実施しない設定となっており、Windows 10 のすべての脆弱性がコンピュータに存在した。」[1]

報告書によると、電子カルテや医事会計システムの動作が不安定になるという理由で、脆弱性への対処をせず、ウイルス対策ソフトも止めていました。電子カルテの会社が、パソコンを納入・設定した会社に Windows の更新を無効にするよう指示していた、とも書いています[1]。

サポートの切れた Windows 7 の端末も残っていました。報告書はこれについて、「電子カルテを始めとしたシステムを支障なく動かすためには、継続し続けるしかなかった現実もあった」と書き残しています[1]。

侵入の入口は、前回の記事で取り上げた VPN 装置と考えられています[1]。入られたあと院内で被害が広がった理由として、報告書は全端末で同じ管理者アカウントを使っていたことや、弱いパスワードの設定を挙げています。それに加えて、Windows の更新も止められていました[1]。

これを先生の外来に置き換えてみます。受付のパソコンは毎朝つき、カルテも開ける。困っていることは何もない。ただ、その建物の勝手口の鍵は、2025 年 11 月から直っていないかもしれません。

動いているうちは、誰も気づきません。

安全管理ガイドラインも、サポート終了の機器が攻撃の起点になる事案が多くみられる、と書いています[10]。報告書の中で私がいちばん重いと読んだのは、更新を止めたのが攻撃者ではなく、「カルテを安定して動かすため」という設定だったことです。先生の院のパソコンにも、同じ理由の設定が入っていないとは言い切れません。

自院は当てはまるか

院内の Windows 10 の PC それぞれに、次の 4 つを順に聞きます。答えによって、進む道が 3 つに分かれます。

質問 1. Windows 10 のパソコンは何台あるか

受付、診察室、処置室、事務室、院長室。オンライン資格確認の端末、レセコン、レントゲンや心電図などの検査機器につながったパソコンも数えます。

無床診療所の見取り図。受付に2台のパソコンとオンライン資格確認のカードリーダー、診察室に1台、検査室に検査機器とつながった1台、事務室にレセコンの1台があり、いくつかに数える印の黄色い丸がついている
図 3: Windows 10 のパソコンが残りやすい場所。検査機器やオンライン資格確認につながったパソコンも数える (編集部作成。院内の配置は一例)

質問 2. その PC のエディションは何か

「LTSC」と書かれていれば、ESU の話ではありません。上の表の期限を台帳に書いておきます。Enterprise LTSC 2021 は 2027 年 1 月 12 日で、比較的早く来ます[6]。「Home」なら組織向け ESU の対象に挙がっていないので、Windows 11 への移行か買い替えを先に考えます[2][5]。

質問 3. ESU の 1 年目に登録してあるか

画面を見てもわかりにくいところです。登録したかどうかは、作業した会社に聞くのが早い方法です。登録していなければ、そのパソコンには 2025 年 11 月以降、修繕が届いていません。

質問 4. 電子カルテなどのソフトと、パソコン本体が Windows 11 に対応しているか

電子カルテ・レセコン・検査機器のソフトが Windows 11 で動くかは、各社に聞くしかありません。パソコン本体は、Microsoft の無料のツール「PC 正常性チェック」で Windows 11 の要件を満たすかを確かめられます[11]。要件の 1 つが TPM 2.0 (パソコンの中で暗号の鍵を守る専用の部品) です[11]。

Windows 10のパソコンから、LTSCかどうか、ソフトと本体がWindows 11に対応しているか、延長の費用を出せるかの3つの問いで分かれ、A移る、B延長を1年、Cつながりを減らすの3つの道に進み、BとCからも移る日付を決める点線がAに向かう判定フロー図
図 4: 道を分ける 3 つの問い。台数とエディションを数えたあと、LTSC か・Windows 11 に対応するか・延長の費用を出せるかで A・B・C に分かれる。B と C を選ぶ PC にも、A (移行) の日付を決める (出典: Microsoft Learn、Microsoft Lifecycle FAQ、安全管理ガイドライン第7.0版 8.2 を基に編集部作成)

4 問の答えのうち、道を分けるのは質問 2〜4 です (図 4)。道は 3 つに分かれます。

  • A. Windows 11 へ移る: ソフトも本体も対応していれば、移るのが本筋だと編集部は考えます。本体が古ければ、買い替えになります
  • B. ESU をもう 1 年続ける: 電子カルテの Windows 11 対応版がまだ出ない、買い替えの予算が今年度に無い、といった場合のつなぎです
  • C. 当面は外とのつながりを減らし、移行の計画に載せる: 人も予算も無いときの最小の手です。インターネットに出さない、USB メモリをつながない、といった代わりの対策をとります。ただし欠陥そのものは直りません (後で説明します)

私は、B と C を選ぶ PC にも、A へ移り終える日付を同時に決めておくべきだと考えています。理由は 3 つあります。ESU は最長 3 年で、料金は年ごとに倍になります[3]。Microsoft 自身も ESU を「一時的な橋渡し」(temporary bridge、編集部訳) と位置づけています[2]。そして半田病院の報告書とガイドラインが示すとおり、更新の止まった機器は攻撃の起点になります[1][10]。

今日・30 日・90 日でやること

本文では、やることに 3 つの印を付けます。

  • 〔立入検査〕は、令和 8 年度版のサイバーセキュリティ対策チェックリストの項目に関わる手順です (項目の番号を併記します)。医療法施行規則第 14 条第 2 項は、診療所の管理者に、サイバーセキュリティの確保に必要な措置を義務づけています (2023 年 4 月施行)[9]。チェックリストは、その状況を保健所が立入検査で確かめるための確認表です[8]。「いいえ」の項目には、令和 8 年度中の対応目標日を書きます[8]
  • 〔ガイドラインが求める〕は、安全管理ガイドライン第 7.0 版が求めていることです
  • 〔推奨〕は、編集部の整理です
今日、30日、90日の3列に手順のカードを並べ、院長・事務・保守会社の担当を色で分けた流れ図。今日はパソコンの書き出しと質問文の送付、30日はWindows 11対応の確認・本体の要件確認・A B Cの決定・2年目の登録、90日は移行の予算化・代替策の書面化・個人向けの解消
図 5: 今日・30日・90日の手順と担当。2 年目の登録は、実施が保守会社・確認が事務 (出典: 令和8年度版 チェックリスト 2-①・2-⑥、安全管理ガイドライン第7.0版 8.2 を基に編集部作成)

今日 (台数が 10 台までなら 30 分ほど)

  1. 院内のパソコンをすべて書き出す〔立入検査 2-①〕

    担当: 事務 / 済んだ印: 全台が 1 枚の表に並んでいること

    チェックリスト 2-① は、サーバー・端末・ネットワーク機器の台帳 (一覧表) を求めています[8]。場所・用途・エディション・バージョン・保守している会社の 5 列で足ります

  2. Windows 10 の PC を保守している会社に、下の質問文を送る〔立入検査 2-⑥ に関わる〕

    担当: 事務 (送る前に院長が文面を確認) / 済んだ印: 送った日付が表にあること

    チェックリスト 2-⑥ は、セキュリティパッチ (弱点を直す更新) の適用を求めています[8]。ESU に登録していない Windows 10 (LTSC を除く) には、2025 年 11 月以降の Windows のセキュリティ更新が届きません[3]。質問文は、その現状を確かめるためのものです

30 日

  1. 電子カルテ・レセコン・検査機器の会社に、Windows 11 で更新できるかを確かめる〔ガイドラインが求める〕

    担当: 事務 / 済んだ印: 各社の回答が台帳に写してあること

    ガイドラインは、更新が他のソフトの動作に影響することを想定し、事前に事業者に「脆弱性対策の実施の可否を確認」し、難しい場合は「代替策を講じること」としています[10]。時期と費用まで書面でもらうのは、編集部の推奨です

  2. パソコン本体が Windows 11 の要件を満たすか確かめる〔推奨〕

    担当: 事務 (難しければ保守の会社) / 済んだ印: 台帳に「対応 / 非対応」が入っていること

  3. PC ごとに A・B・C を決め、A へ移り終える日付を入れる〔立入検査 2-⑥ に関わる〕

    担当: 院長 / 済んだ印: 台帳の全台に道と日付が入っていること

    2-⑥ が求めているのは更新の適用で、ESU の購入そのものではありません。Windows 11 へ移っても、2 年目の ESU を登録しても、LTSC の期限内でも満たせます (編集部の整理)

  4. B を選んだ PC は、2 年目の ESU を登録する〔立入検査 2-⑥ に関わる〕

    担当: 実施は保守の会社 / 確認は事務 / 済んだ印: 「2 年目の分が有効になっています」という文書か画面の写しをもらっていること (画面には英語で Licensed=有効、と出ます)

    ESU は年単位で買い、年ごとに別の有効化の手続き (ライセンス=その年の更新を受け取る権利) をします[3][4]。1 年目の登録だけでは、2 年目の更新は届かないと考えてください (編集部の整理)

1年目、2年目、3年目の3枚の修繕契約書が並び、1年目の契約書から毎月の修繕の封筒がパソコンに届いている。2年目の契約書は点線だけで封筒が途切れ、2年目の登録が必要と書かれている概念図
図 6: 延長 (ESU) の登録は 1 年ごと。年ごとに別のライセンスで有効にするため、1 年目の登録だけでは 2 年目の更新は届かない (出典: Microsoft Learn「Enable Windows 10 ESU」を基に編集部作成)

2026 年 10 月 13 日を過ぎても、2 年目は買えます。1 年目に登録していなかった PC が 2 年目から入るときは、1 年目の分も払います[3]。ただし、2 年目の登録が有効になるまでの間、その PC には修繕が届きません (編集部の整理)。急ぐのは購入そのものより、「どの PC が B か」を決めることです。

90 日

  1. A の移行を年度の予算と保守の予定に載せる〔立入検査 2-⑥ に関わる〕

    担当: 院長 / 済んだ印: 台帳に移行の年度が入っていること

    電子カルテの更改 (入れ替え) と重なるなら、同じ回にまとめます

  2. C を選んだ PC は、代わりの対策を会社と決めて書面に残す〔ガイドラインが求める〕

    担当: 院長 / 済んだ印: 代わりの対策と期限が書面にあること

    ガイドラインの言う「代替策」です[10]。例は次のとおりです

    • インターネットに出られないようにする
    • USB メモリをつながない
    • 用途を 1 つに絞る

    ただし、つながりを減らしても欠陥そのものは直りません。半田病院も、外とつながらない院内だけのネットワークと考えられていた環境が、実際には VPN 装置で外とつながっていました[1]。C は期限付きの措置と考え、A の日付を必ず入れます

  3. 個人向けの ESU で登録した PC がないか確かめる〔推奨〕

    担当: 事務 / 済んだ印: 台帳の全台が「組織向け ESU」「LTSC」「Windows 11」のどれかになっていること

    院長個人の Microsoft アカウントで登録した PC が混じっていたら、組織向けに切り替えるか、移行を早めます。Home の PC は組織向けの対象に挙がっていないので、Pro 以上への変更か移行になります[2][5]

1 と 2 だけなら今日終わります。私は、ここで止まっても意味があると考えています。台帳さえあれば、30 日以降は事務の仕事として回せるからです。

電子カルテ会社への質問文

Windows 10 の PC を保守している会社ごとに、同じ文面を送ります。

件名: 【ご確認のお願い】Windows 10 の端末と延長更新 (ESU) について

{会社名} ご担当者様

いつもお世話になっております。{医療機関名} の {氏名} です。
厚生労働省「医療機関・薬局におけるサイバーセキュリティ対策
チェックリスト」(令和8年度版) 2-① 台帳管理と
2-⑥ セキュリティパッチの適用に沿って院内の台帳を整えるため、
下記を書面でご回答ください。

1. 貴社が保守している当院の端末のうち、
   Windows 10 のものは何台ですか。設置場所・エディション
   (Pro / Enterprise / LTSC など)・バージョンを教えてください。
2. その端末は Windows 10 の拡張セキュリティ更新 (ESU) の
   1年目に登録されていますか。登録した日と、
   登録したのは貴社か当院かを教えてください。
3. 次の2つの場合の、それぞれの費用と作業日を教えてください。
   (1) 2年目 (米国時間 2026年10月14日〜2027年10月12日) の
       ESU を登録する
   (2) Windows 11 へ移る (端末の買い替えが必要かも含めて)
4. 貴社のシステムは Windows 11 で動作確認済みですか。
   対応版の提供時期を教えてください。
5. 端末本体は Windows 11 の要件を満たしていますか。
6. 端末で Windows Update やウイルス対策ソフトを
   止めている設定はありますか。ある場合、その理由と、
   代わりにとっている対策を教えてください。
7. Windows の更新の適用は保守契約に含まれていますか。
   契約書の条番号もお願いします。

お手数ですが、{2週間後の日付} までに
ご回答いただけますと幸いです。

答えが「はい」でも、裏づけをもらいます。2 は ESU が有効になっていることを示す画面の写し、7 は契約書の条番号です。

7 問のうち、私がいちばん大事だと考えているのは 6 です。半田病院では、電子カルテの会社の指示で、更新を止める設定が入っていました[1]。カルテの安定のための設定でも、院長が知っていれば代わりの対策を話し合えます。

ESU のライセンスも PC の買い替えも、保守の会社にとっては売上になります。比べたいときは、ほかの販売店からも見積もりを取れます。ESU は 1 ライセンスから買えます[3]。

費用と頼れる先

ESU の料金は、Microsoft が公表しています[3]。

期間 (米国時間)1 台あたり根拠
1 年目 (〜2026-10-13)61 米ドルMicrosoft 公表[3]
2 年目 (〜2027-10-12)122 米ドル「年ごとに 2 倍」からの計算[3]
3 年目 (〜2028-10-10)244 米ドル同上
2 年目から入る場合183 米ドル (1 年目 + 2 年目)「1 年分も支払う」からの計算[3]

データの読み方

この表で Microsoft が数字として公表しているのは、1 年目の 61 米ドルだけです。122 と 244 は、「年ごとに 2 倍」という規則から編集部が出した値です[3]。見積もりの数字がこれと違ったら、為替と販売店の手数料のほかに、規則のどこが変わったのかを聞きます。公表値と計算値を分けて読むと、見積もりの妥当さを自分で確かめられます。

たとえば Windows 10 が 5 台残り、1 年目から登録していれば、2 年目は 5 台で 610 米ドルです。3 年目まで続けると、1 年目からの合計は 1 台 427 米ドル (61 + 122 + 244) になります。仮に 1 ドル 150 円なら、2 年目の 5 台分はおよそ 9 万 2 千円、3 年間の合計は 1 台およそ 6 万 4 千円です (為替は仮定、編集部の計算)。円での価格は販売店の見積もりで決まります。

この 6 万 4 千円を、質問文の 3 (2) でもらう買い替えの見積もりと並べてみてください。パソコン本体の買い替えや、電子カルテの Windows 11 対応版への更新の費用は、公的な資料に相場が見当たらないからです。

先生の院で、Windows 11 に上げられない理由は「カルテ」と「本体」のどちらでしょうか。私は、見積もりを比べるのはその答えが出てからでよいと考えています。カルテが理由なら待つ期間はカルテ会社次第で、本体が理由なら買い替えの時期は院長が決められるからです。

電子カルテそのものを乗り換える時期と重なるなら、「電子カルテ、待てば半額になるのか」の記事で整理した国の補助の動きも合わせて見てください。

困ったときの窓口 (厚労省の連絡先、個人情報保護委員会、お助け隊サービスなど) は、前回の記事「保守用VPNは、うちの院にもあるのか」の「費用と頼れる窓口」にまとめました。

印刷用チェックシート

院内に貼るか、立入検査の資料と一緒に綴じてください。No は本文の手順の番号と同じです。私なら、1 の台帳だけは今夜のうちに院長が自分で埋めます。

No確かめること区分担当期限済
1院内の全パソコンを台帳に書いた (場所・用途・エディション・バージョン・保守会社)立入検査 2-①事務今日□
2Windows 10 の PC を保守する全社に質問文を送った (送った日付を記録)2-⑥ に関わる事務今日□
3各社から Windows 11 で更新できるかの回答をもらったガイドライン事務30 日□
4本体が Windows 11 の要件を満たすか確かめた推奨事務30 日□
5PC ごとに A (移る)・B (延長)・C (減らす) と、移り終える日付を決めた2-⑥ に関わる院長30 日□
6B の PC に 2 年目の ESU が有効と確かめた (記録をもらった)2-⑥ に関わる実施: 保守会社 / 確認: 事務30 日□
7A の移行を年度の予算と保守の予定に載せた2-⑥ に関わる院長90 日□
8C の PC の代わりの対策と期限を書面にしたガイドライン院長90 日□
9個人向け ESU の PC が残っていない推奨事務90 日□

今日決める 1 つ: 院内の Windows 10 の PC を、それぞれいつまで使うか。 日付: ____年__月__日 まで (台数: __台)

おわりに——まず、台数を数える

Windows 10 の延長は 1 年ごとの契約で、1 年目は 2026 年 10 月 13 日 (米国時間) までです。

サポートが切れても、パソコンはふだんどおり動きます。だから最初にやることは、パソコンを買うことではありません。院内のパソコンをすべて書き出し、Windows 10 の台数と保守している会社を 1 枚の表にすることです。費用はかからず、立入検査のチェックリスト 2-① もそこから始まります。

私は、延長を続けるかどうかより先に、「いつまで使うか」の日付を 1 台ずつ決めることが大事だと考えています。日付の無い延長は、倍々の料金を 3 年払ったあとで、結局同じ移行の前に立つ道だからです。

次の記事では、バックアップを取っているのに戻せない理由と、コピーの置き場の決め方を取り上げます。

なお、本記事は 2026 年 10 月 12 日時点の公表資料に基づく一般的な情報提供で、個別の契約や法的判断についての助言ではありません。半田病院の事案は、調査報告書の記載の範囲で紹介しています。ESU の購入・登録と端末の設定は契約している事業者に、立入検査の運用は管轄の保健所にご確認ください。

参考文献

  1. つるぎ町立半田病院. コンピュータウイルス感染事案 有識者会議調査報告書. 2022年6月. https://www.handa-hospital.jp/topics/2022/0616/report_01.pdf
  2. Microsoft. Lifecycle FAQ - Extended Security Updates (ESU Availability and End Dates). 2026年10月12日取得. https://learn.microsoft.com/en-us/lifecycle/faq/extended-security-updates
  3. Microsoft. Windows 10の拡張セキュリティ Updates (ESU) プログラム. Microsoft Learn. 2026年10月12日取得. https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/whats-new/extended-security-updates
  4. Microsoft. Enable Windows 10 Extended Security Updates (ESU). Microsoft Learn. 2026年10月12日取得. https://learn.microsoft.com/en-us/windows/whats-new/enable-extended-security-updates
  5. Microsoft. Windows 10 コンシューマー拡張セキュリティ更新プログラム (ESU). 2026年10月12日取得. https://www.microsoft.com/ja-jp/windows/extended-security-updates
  6. Microsoft. Product Lifecycle: Windows 10 Enterprise LTSC 2019 (https://learn.microsoft.com/en-us/lifecycle/products/windows-10-enterprise-ltsc-2019) / IoT Enterprise LTSC 2019 (https://learn.microsoft.com/en-us/lifecycle/products/windows-10-iot-enterprise-ltsc-2019) / Enterprise LTSC 2021 (https://learn.microsoft.com/en-us/lifecycle/products/windows-10-enterprise-ltsc-2021) / IoT Enterprise LTSC 2021 (https://learn.microsoft.com/en-us/lifecycle/products/windows-10-iot-enterprise-ltsc-2021). 2026年10月12日取得
  7. 厚生労働省. 資格確認端末において満たすべき要件 (令和8年5月1日版). https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000623527.pdf
  8. 厚生労働省. 令和8年度版 医療機関・薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト. 令和8年6月. https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001716185.pdf
  9. 厚生労働省. 医療法施行規則の一部を改正する省令について (産情発0310第2号). 令和5年3月10日. https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001075881.pdf
  10. 厚生労働省. 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版 システム運用編 (8.2 情報機器等の脆弱性への対策). https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001716295.pdf
  11. Microsoft. Windows 11 の仕様とシステム要件. 2026年10月12日取得. https://www.microsoft.com/ja-jp/windows/windows-11-specifications

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