CLINICAL DECISION

臨床判断・文献支援

鑑別支援・エビデンス検索・診療ガイドライン参照。8 製品 (国内提供 2) を掲載。 掲載順は評価順ではありません — 国内提供を先に、あとは名前順です。

Buying Guide

臨床判断・文献支援の選び方

専門外の相談で鑑別に自信が持てない、最新のエビデンスを調べたいが外来の合間にその時間がない、生成 AI に聞きたいが患者情報を入力してよいのか不安 — 臨床判断・文献支援 (臨床判断支援ツール / CDSS) は、こうした「調べる・考える」フェーズを支えるカテゴリです。臨床上の疑問に査読論文やガイドラインを根拠に答えるもの、患者サマリから鑑別診断の候補を出すもの、電子カルテのデータを監視して見落としや急変の兆候を知らせるものまで、機能の幅が広いのが特徴です。

このカテゴリは、院長個人の診療の質を底上げする目線で選べる領域でもあります。ただし「診断を出してくれるツール」と「考える材料を出してくれるツール」では、医療機器の該当性も使い方の作法もまったく違います。汎用の ChatGPT に患者情報を打ち込むのとは何が違うのか、という点も含めて、導入前に確認すべきポイントを公開情報ベースで整理します。

なお国内で正式提供されている製品はまだ少なく、文献回答や診断支援の本格的な実用化は海外が先行しています。そのため本ガイドでは、国内 2 製品の位置づけに加えて、海外製品 (いずれも日本未上陸) を「このカテゴリがどこまで到達しうるか」のベンチマークとして厚めに紹介します。

導入前に確認する 6 つのポイント
  1. CHECK 01

    情報源の透明性 — 引用が一次文献まで届くか

    このカテゴリで最も差が出るのが「回答の根拠を確認できるか」です。汎用の生成 AI は出典のない断定をしがちですが、医師向けに作られた製品は査読論文・ガイドライン・薬剤情報を根拠に引用元を明示する設計を取ります。OpenEvidence は NEJM・JAMA・NCCN・Cochrane との文献提携を、Doximity GPT はガイドライン・系統的レビュー・査読論文に基づく根拠付き回答を公式に訴求しています。

    回答そのものより、示された引用をたどって一次情報に当たれるかを、デモや無料枠で実際に確認してください。引用が確認できない製品は、調べものの最終確認をかえって増やすことがあります。

  2. CHECK 02

    日本語・日本のガイドラインへの対応

    文献回答・診断支援で実績のある製品の多くは米国発で、根拠とする文献もガイドラインも米国のものが中心です。OpenEvidence・Doximity GPT・Glass Health・Bayesian Health・Navina・Regard はいずれも日本未上陸で、日本語 UI や日本の診療ガイドライン・保険診療への正式対応は確認できていません。

    国内で正式に使えるのは、医師向けリファレンスアプリの HOKUTO と、電子カルテ向けの文書生成オプションである MegaOak AI 診療支援が中心です。海外製品を個人輸入的に使う場合は、推奨内容が日本の保険・薬事と食い違いうる前提で、必ず日本のガイドラインに照らして読み替えてください。

  3. CHECK 03

    患者情報を入力してよいか — 守秘義務とデータの扱い

    鑑別を相談したり症例を要約させたりする際、患者情報をどこまで入力してよいかは慎重に判断すべき論点です。医師向けに設計された製品は、この点を明示的に訴求します。Doximity GPT は HIPAA 準拠で各セッションが個別にプライベート・プロンプトデータを学習に使わないと、MegaOak AI 診療支援はクラウド処理である旨を公式に説明しています。

    汎用 LLM に患者を特定しうる情報をそのまま入力するのは避け、入力データの保存先・学習利用の有無・通信暗号化を契約前に確認してください。日本では医療情報システムの安全管理ガイドライン (いわゆる 3 省 2 ガイドライン) への対応状況も判断材料になります。

  4. CHECK 04

    無料か有料か — 収益モデルと公開価格の有無

    このカテゴリは料金体系が両極端です。医師個人向けの文献・リファレンス系は無料モデルが目立ち、HOKUTO は医師は全機能無料 (製薬広告が収益源)、OpenEvidence は認証医療従事者に無料 (文脈連動広告・製薬スポンサー)、Doximity GPT は検証済み米国臨床医に無料・無制限です。

    一方で、診断支援・電子カルテ監視・チャートレビュー系は公開価格のないエンタープライズ契約が中心で、Bayesian Health・Navina・Regard はいずれも問い合わせ式です。Glass Health のように個人課金の公開価格 (月 0〜180 USD〜) を持つ例は例外的です。無料=何でも入力してよい、ではない点に注意し、収益モデルとデータの扱いをセットで確認してください。

  5. CHECK 05

    単体アプリか電子カルテ統合か

    提供形態は大きく 2 つに分かれます。HOKUTO・OpenEvidence・Glass Health・Doximity GPT は、医師が能動的に質問を打ち込んで使うスタンドアロン型 (アプリ/Web) です。導入が手軽な一方、電子カルテとは独立しています。

    もう一方は、電子カルテのデータを前提に動く統合型です。MegaOak AI 診療支援は NEC の電子カルテ本体に組み込むオプション、Bayesian Health・Navina・Regard は Epic などの海外電子カルテと連携して動きます。後者は「見落としを先回りで知らせる」用途に向きますが、対応する電子カルテと契約規模のハードルが高くなります。自院が能動的な調べもの支援が欲しいのか、受動的な見落とし検知が欲しいのかで選ぶ方向が変わります。

  6. CHECK 06

    第三者検証の有無 — 効果が確かめられているか

    「AI が診断を助ける」という訴求の確からしさは製品で大きく異なります。Bayesian Health は前身の TREWS を名指しで評価した前向き多施設研究が Nature Medicine 2022 に 2 報あり、根拠先行型の代表例です。OpenEvidence・Doximity GPT も製品名を対象とした査読付きの比較・観察研究が複数あります。

    一方で HOKUTO・Glass Health・Navina・Regard は、現時点で製品そのものを評価した査読研究が確認できず、効果は主にベンダー自社集計値です。査読研究がないこと自体は必ずしも減点ではありませんが、その場合は自院での試用や提示内容の確認を、検証の代わりとして重視する姿勢が現実的です。

うちの場合はどれ? — 状況別の考え方
  • 専門外の相談に備えて、根拠付きで調べられる手元のツールが欲しい

    院長個人の診療の質を底上げする目線では、まず無料で使える医師向けのリファレンス・文献回答系から始めるのが手堅い入り口です。国内では HOKUTO が医師全機能無料で、500 種以上の医療計算ツールや薬剤情報、UpToDate・PubMed の横断検索まで備えています。市場定着度は医師の約 3 人に 1 人が使う「普及先行」段階ですが、製品そのものの査読研究は確認できていません。文献回答の到達点を知りたい場合は、米国で医師の 3 分の 1 超が使う OpenEvidence (日本未上陸) が、査読研究も複数ある根拠先行型として参考になります。

    例:HOKUTOOpenEvidence

  • 鑑別診断の候補出しや、文献を踏まえた治療プランの草案づくりを助けてほしい

    患者サマリから鑑別や治療プランの草案を出す用途では、海外製品が先行しています。Glass Health (日本未上陸) は鑑別診断候補とガイドライン準拠のプラン草案を生成し、月 0〜180 USD〜の公開価格を持つ点が珍しい一方、製品の査読研究はなく市場定着度も「新興・観察」段階です。Doximity GPT (日本未上陸) は臨床質問への根拠付き回答に加え保険レターなどの文書作成も担い、製品名を対象とした査読研究が複数ある根拠先行型です。いずれも提示はあくまで「検討すべき候補」で、最終判断は医師が担う前提です。日本での正式提供はないため、使う場合は日本のガイドラインに照らした読み替えが必須です。

    例:Glass HealthDoximity GPT(DoxGPT)

  • 電子カルテのデータから、見落としや急変の兆候を先回りで知らせてほしい

    能動的に質問するのではなく、電子カルテのデータを監視して兆候を surfacing する用途は、米国の病院・医療システム向け製品の主戦場で、いずれも日本未上陸です。Bayesian Health は敗血症の早期警告で、前向き多施設研究が Nature Medicine 2022 に載る「根拠先行〜定番」象限の代表格 (2026 年 5 月に米国 FDA 510(k) 取得・Cleveland Clinic 13 病院で展開)。Regard は診断候補の提示とドラフト記録生成を全米 150+ 病院で、Navina はチャートレビューと HCC 候補提示を大手医師グループで展開する「普及先行」型 (両者とも製品の査読研究は未確認)。Epic などの海外電子カルテ統合が前提で、日本のクリニック単独導入の見込みは現時点でありません。

    例:Bayesian Health(敗血症早期警告)RegardNavina(Chart Review)

  • 病院規模で、電子カルテと一体の文書生成・診療支援を国内で正式に使いたい

    国内で電子カルテと統合された形で正式に使えるのは、現時点で MegaOak AI 診療支援 (NEC) が代表例です。診療情報提供書や退院サマリの文章案を生成し、電子カルテ MegaOak/iS の所定欄へワンクリックで登録できます。ただし電子カルテ本体 (標準価格 7,200 万円〜・税抜) にオプション (月額 5 万円〜・税抜) を足す大型パッケージのため、対象は大手病院でクリニック単独導入向けではありません。市場定着度は導入公表が出始めた「新興・観察」段階です。なお公式は「本製品は医療機器ではありません」と明記しており、生成文の最終確認責任は医師にあります。

    例:MegaOak AI 診療支援

※ 例示は状況に合う製品タイプの一例で、おすすめ順位ではありません。判定根拠は各製品ページで開示しています。

費用の目安

このカテゴリは料金が二極化しています。医師個人向けの文献・リファレンス系は無料モデルが中心で、HOKUTO は医師は全機能無料 (製薬企業向け広告が収益源)、海外では OpenEvidence が認証医療従事者に無料 (文脈連動広告・製薬スポンサー)、Doximity GPT が検証済み米国臨床医に無料・無制限です。これらは「タダで使える代わりに収益をどこから得ているか」を理解したうえで、入力する情報の範囲を判断する必要があります。

公開価格を持つ製品は少数です。Glass Health (日本未上陸) が個人課金で月 0 USD (Lite・学生向け)〜18 USD (Starter)〜81 USD (Pro・公式推奨)〜180 USD〜 (Max・クリニック/医療システム向け、EHR 連携含む) の 4 プランを公開しているのが目立つ例です。

一方、診断支援・電子カルテ監視・チャートレビュー系はエンタープライズの問い合わせ式が中心で、Bayesian Health・Navina・Regard はいずれも公開価格表がありません。国内の MegaOak AI 診療支援は電子カルテ本体 7,200 万円〜 (税抜) にオプション月額 5 万円〜 (税抜) という病院向けの規模感です。クリニックが単体で導入できる選択肢は、現時点では無料の医師向けアプリか、Glass Health のような個人課金型に限られるのが実情です。

導入の進め方

  1. 1.まず用途を「能動的な調べもの・鑑別支援」か「電子カルテからの受動的な見落とし検知」かに切り分け、自院に必要な方向を決めます。
  2. 2.国内で正式提供される製品 (HOKUTO・MegaOak AI 診療支援) と、海外の参考製品 (日本未上陸) を分けて候補を整理します。海外製品は日本のガイドライン・保険との食い違いを前提に評価します。
  3. 3.回答の引用が一次文献までたどれるか、無料枠やデモで実際の自分の臨床疑問を使って確かめます。
  4. 4.患者情報を入力する運用にする場合は、入力データの保存先・学習利用の有無・暗号化・3 省 2 ガイドライン対応をベンダーに書面で確認します。
  5. 5.提示内容はあくまで補助であり最終判断は医師が行う、という運用ルールを院内で明文化し、生成記録の確認手順を決めます。
  6. 6.有料製品は公開価格の有無・収益モデル・契約規模を確認し、まず無料枠や小規模プランで試してから本格導入を判断します。

規制・診療報酬の注意点

臨床判断支援ツールは「医療機器プログラム (SaMD) に該当するか」の境界が論点になるカテゴリです。一般に、医師に情報を提供するにとどまり最終判断を医師が行う設計であれば SaMD に該当しないと整理されやすく、診断に直接寄与する (確定診断を提示する等) と判断されれば医療機器規制の対象になりえます。国内製品でも MegaOak AI 診療支援は公式に「本製品は医療機器ではありません」と明記しており、文書生成の最終確認責任は医師にあるとしています。Bayesian Health のように海外で FDA 510(k) クリアランスを取得した製品もありますが、これは米国での承認であり日本の薬事承認とは別物です (2026 年 6 月時点)。

もう一つの論点が、患者情報の入力と守秘義務・個人情報保護です。診断や症例の相談で患者を特定しうる情報を入力する場合、データの保存先・学習利用・暗号化の確認が前提になります。汎用の生成 AI に患者情報をそのまま入力するのは避け、医師向けに守秘・非学習を明示する製品を選ぶか、入力情報を匿名化する運用が安全です。いずれの製品も提示は補助であり、診断・治療の最終判断と記録の責任は医師にあります (2026 年 6 月時点)。

よくある質問

Q. ChatGPT などの汎用 AI に相談するのと何が違うのですか?
医師向けに作られた製品は、回答の根拠として査読論文やガイドラインを引用元付きで示す設計を取り、出典をたどって一次情報に当たれる点が汎用 AI との大きな違いです (例: OpenEvidence は NEJM・JAMA・Cochrane との文献提携、Doximity GPT はガイドライン・SR・査読論文に基づく回答を訴求)。また患者情報の扱いについても、HIPAA 準拠やプロンプトデータを学習に使わない旨を明示する製品があります。ただし国内正式提供は限られ、提示内容が常に正しいとは限らないため、最終判断は医師が担う前提です。
Q. AI に患者の情報を入力して鑑別を相談してもよいですか?
患者を特定しうる情報を汎用の生成 AI にそのまま入力するのは、守秘義務・個人情報保護の観点で避けるべきです。医師向けに守秘・非学習を明示する製品 (Doximity GPT は各セッションが個別にプライベートでプロンプトを学習利用しないと説明) を選ぶか、症例を匿名化して相談する運用が安全です。入力データの保存先・学習利用の有無・暗号化を契約前に確認し、国内では 3 省 2 ガイドラインへの対応状況も判断材料にしてください。
Q. これらのツールは医療機器の承認が必要ですか?
医師に情報を提供するにとどまり最終判断を医師が行う設計であれば、医療機器プログラム (SaMD) に該当しないと整理されやすく、診断に直接寄与すると判断される場合は規制対象になりえます。国内では MegaOak AI 診療支援が公式に「本製品は医療機器ではありません」と明記しています。海外では Bayesian Health が米国 FDA 510(k) クリアランスを取得していますが、これは米国の承認で日本の薬事承認とは別です (2026 年 6 月時点)。いずれにせよ最終判断と記録の責任は医師にあります。
Q. OpenEvidence や Glass Health は日本で使えますか?
OpenEvidence・Glass Health・Doximity GPT・Bayesian Health・Navina・Regard はいずれも日本未上陸で、日本語 UI・日本のガイドライン/保険診療への正式対応や国内導入実績は一次資料で確認できていません (2026 年 6 月時点)。これらは「このカテゴリがどこまで到達しうるか」のベンチマークとして参考になります。国内で正式に使えるのは、医師向けリファレンスアプリの HOKUTO と、電子カルテ向け文書生成オプションの MegaOak AI 診療支援が中心です。
Q. 効果が研究で確かめられている製品はありますか?
製品名を対象とした査読研究があるのは一部です。Bayesian Health は前身の TREWS を評価した前向き多施設研究が Nature Medicine 2022 に 2 報あり、OpenEvidence・Doximity GPT も製品名を対象とした査読付きの比較・観察研究が複数あります。一方、HOKUTO・Glass Health・Navina・Regard は現時点で製品そのものの査読研究が確認できず、効果は主にベンダー自社集計値です。査読研究がないこと自体は必ずしも欠点ではありませんが、その場合は自院での試用や提示内容の確認を検証の代わりに重視するのが現実的です。

最終確認日: 2026-06-13。本ガイドは公開情報と編集部の調査に基づき、掲載料は受け取っていません。

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