DIGITAL THERAPEUTICS
治療用アプリ (DTx)
承認済み治療用アプリと処方・指導管理の周辺。 全 8 製品 (国内提供 5) を掲載。 掲載順は評価順ではありません — 国内提供を先に、あとは名前順です。
Buying Guide
治療用アプリ (DTx)の選び方
薬以外の選択肢も患者さんに出したいのに手札が少ない、禁煙外来や生活習慣指導で「診察の合間」が空白になり継続率が伸びない — 治療用アプリ (DTx) は、医師が処方し、患者さんがスマートフォンで学習・記録・行動変容に取り組むことで、この通院と通院のあいだの『治療空白』を埋めるカテゴリです。
このカテゴリが他と違うのは、「導入=院内システムの購入」ではなく「個々の患者さんへの処方・指導管理」である点です。高血圧・禁煙・不眠・小児 ADHD・糖尿病といった対象疾患ごとに別々の製品があり、自院の患者層にその疾患の方がいて初めて意味を持ちます。さらに薬機法上の承認 (SaMD) と保険収載の有無、施設基準・研修要件の充足、対面/オンラインの指導体制までが選定の軸になります。
このカテゴリは査読付き RCT で有効性を検証した製品が多いのが特徴です。このガイドでは、対象疾患・規制ステータス・指導体制を軸に、公開情報と査読研究 (PMID) をもとに整理します。
CHECK 01
自院の患者層に対象疾患があるか
治療用アプリは疾患ごとに製品が分かれます。国内で保険適用されているのは、高血圧 (CureApp HT)、ニコチン依存症 (CureApp SC)、不眠障害 (サスメド Med CBT-i)、小児 ADHD (ENDEAVORRIDE) などです。糖尿病向けの SMC-01 は第 III 相 RCT で主要評価項目 (HbA1c) に有意差が出ず、承認・上市に至っていない研究段階の製品です。
まず自院の外来に該当疾患の患者さんがどれだけいるかを起点に、処方しうる製品を絞り込んでください。該当患者がいなければ、どれだけ評価の高い製品でも処方機会は生まれません。
CHECK 02
薬機法承認 (SaMD) と保険収載の有無
このカテゴリの根幹は、その製品が医療機器プログラム (SaMD) として承認され、保険収載されているかどうかです。承認・保険収載済みであれば保険診療として処方でき、研究段階の製品は処方そのものができません。
CureApp HT・CureApp SC・サスメド Med CBT-i・ENDEAVORRIDE はいずれも国内で薬事承認を取得しています (サスメド Med CBT-i は 2026 年 6 月 1 日、ENDEAVORRIDE は 2026 年 6 月 5 日と、ごく最近上市された製品もあります)。一方、海外承認のみの製品 (後述) は日本で処方できません。承認番号と保険収載日を公式情報で確認するのが第一歩です。
CHECK 03
施設基準の届出と研修要件を満たせるか
保険適用された治療用アプリの処方には、製品ごとに施設基準の届出や医師の研修が前提になる場合があります。たとえば CureApp SC (禁煙) はニコチン依存症管理料の施設基準を地方厚生局に届け出た医療機関で処方する形です。サスメド Med CBT-i (不眠) は、医師が CBT-I 研修またはサスメドの適正使用研修を修了したうえで処方する設計です。
また令和 8 年度改定で「プログラム医療機器等指導管理料」にオンライン診療版 (情報通信機器を用いた場合 78 点) が新設され、その算定には別途の施設基準届出が必要です (2026 年 6 月時点)。自院が届出・研修の要件を満たせるかを、導入前に確認してください。
CHECK 04
対面 / オンラインの指導体制
治療用アプリは「処方して終わり」ではなく、医師が診察時に患者さんの記録を確認して指導する運用が前提です。多くの製品が医師用の管理画面 (CureApp HT の医師アプリ、サスメド Med CBT-i の Medcle for Doctors など) で、患者さんの血圧推移・睡眠記録・症状尺度をグラフで確認できる作りになっています。
対面外来で確認するのか、オンライン診療を組み合わせるのかで、必要な施設基準も運用フローも変わります。自院の診療スタイル (対面中心か、オンライン併用か) に合わせて、フォローアップの段取りを先に決めておくと運用が安定します。
CHECK 05
効果検証の根拠 — 査読研究を見る
このカテゴリは、製品そのものを評価した査読付き RCT を持つものが多いのが強みです。CureApp HT は HERB-DH1 (Eur Heart J 2021、390 例、24 時間収縮期血圧の群間差 -2.4 mmHg、p=0.026)、CureApp SC は国内第 III 相 RCT (npj Digit Med 2020、24 週継続禁煙率 63.9% vs 50.5%)、サスメド Med CBT-i は二重盲検シャム対照 RCT (Sleep 2023、AIS 群間差 -3.4、p<0.001) と、いずれも査読誌に公表されています。
一方、ENDEAVORRIDE は国内第 3 相試験 (164 例、ADHD-RS-IV 不注意スコアで p<0.05) の良好な結果が公式発表されていますが、製品そのものを評価した原著論文はまだ確認できず、現状は公表ベースの段階です。承認済みでも検証の成熟度は製品で差があるため、公式情報の根拠まで確認することをおすすめします。
生活習慣病外来で薬以外の継続支援を加えたい
高血圧の患者さんに生活習慣修正を続けてもらいたい場合は、世界初の高血圧領域での承認・保険適用となった CureApp HT が候補です。査読付き RCT (HERB-DH1) で家庭血圧・24 時間血圧の有意な低下が示され、定番〜根拠先行の象限に位置づく製品です。診察と診察の間の治療空白に介入し、医師アプリで血圧推移・行動変化を確認しながら指導する設計なので、既存の高血圧診療にそのまま上乗せしやすいのが特徴です。
禁煙外来の継続率を上げたい
禁煙外来をすでに持っているなら、日本で初めて薬事承認・保険収載された治療用アプリである CureApp SC が候補になります。国内第 III 相 RCT で継続禁煙率の有意な上乗せ (24 週で 63.9% vs 50.5%) が示された根拠の厚い製品です。処方できるのはニコチン依存症管理料の施設基準を届け出た医療機関なので、自院がその施設基準を満たしているかが入口の確認事項になります。
睡眠薬に頼らない不眠治療や、小児 ADHD の非薬物の選択肢を増やしたい
不眠については、不眠治療領域で日本初の保険適用プログラム医療機器となったサスメド Med CBT-i が候補です。二重盲検シャム対照 RCT で有効性が示された一方、処方には医師の CBT-I 研修または適正使用研修の修了が前提なので、研修要件を満たせるかが分かれ目です。小児 ADHD では、2026 年 6 月発売の ENDEAVORRIDE がゲーム形式の治療補助として国内初の承認・保険適用 (保険償還 14,500 円) を得ています。どちらも上市直後で導入実績の公表が乏しい新興・観察段階のため、まず少数例で運用を確かめるのが現実的です。
海外の到達点や研究段階の製品も把握しておきたい
海外では Big Health の Sleepio (不眠、英国 NICE MTG70 推奨・NHS スコットランド全国提供) や Daylight (不安)、Akili の EndeavorRx (小児 ADHD、FDA De Novo) が承認・展開されています。いずれも日本未上陸で今すぐ処方はできませんが、このカテゴリの効果検証がどこまで進みうるかのベンチマークになります。国内では糖尿病向けの SMC-01 が第 III 相 RCT を実施したものの主要評価項目 (HbA1c) に有意差が出ず、承認・上市に至らなかった研究段階の製品です。承認の有無と研究結果はセットで見ておくと判断を誤りにくくなります。
※ 例示は状況に合う製品タイプの一例で、おすすめ順位ではありません。判定根拠は各製品ページで開示しています。
費用の目安
このカテゴリは「院内システムの購入価格」ではなく「保険診療として算定する点数・材料」が費用の中心です。共通して、プログラム医療機器等指導管理料 90 点 (月 1 回)・導入期加算 50 点 (初回のみ) が算定される製品があり、これに製品ごとの特定保険医療材料が加わります。令和 8 年度改定では、この指導管理料に情報通信機器を用いた場合 (78 点) が新設されました (2026 年 6 月時点)。
特定保険医療材料は製品で異なります。公式・公的資料で確認できた範囲では、CureApp HT が 7,010 円 (月 1 回・6 か月限度)、サスメド Med CBT-i が 24,100 円です。ENDEAVORRIDE は保険償還価格 14,500 円 (患者自己負担は原則 3 割) と報じられています。CureApp SC は導入期に準用技術料と材料加算を合わせて 2,540 点 (おおむね 25,400 円) が算定されると報道で整理されています。
医療機関側の導入・維持費用は無料とする製品もあります (CureApp HT・サスメド Med CBT-i は公式に「導入費・維持費はかからない」「導入・維持費用は無料」と説明)。患者さんの実負担は保険の自己負担割合に応じます。なお具体的な点数・材料価格は告示・改定で変わるため、処方前に最新の公式・公的資料で確認してください。
導入の進め方
- 1.自院の外来に該当疾患 (高血圧・禁煙・不眠・小児 ADHD など) の患者さんがどれだけいるかを把握し、処方しうる製品を絞り込みます。
- 2.候補製品が薬機法承認・保険収載済みか (研究段階でないか) を、承認番号・保険収載日まで公式情報で確認します。
- 3.処方に必要な施設基準の届出 (例: ニコチン依存症管理料) や医師の研修要件 (例: CBT-I 研修) を満たせるかを確認し、必要なら届出・受講を進めます。
- 4.医師用管理画面でのフォローアップ運用 (記録の確認頻度・対面/オンラインの指導体制) と、患者さんへの説明・同意の段取りを決めます。
- 5.プログラム医療機器等指導管理料・導入期加算・特定保険医療材料の算定方法を確認し、少数の患者さんで処方を始めて運用と効果を振り返ります。
規制・診療報酬の注意点
このカテゴリは、製品が医療機器プログラム (SaMD) として薬事承認され、保険収載されているかどうかが根幹です。承認・保険収載済みであれば医師が処方して保険診療として提供できますが、研究段階 (未承認) の製品は処方できません。本ガイドで触れた国内製品のうち、CureApp HT・CureApp SC・サスメド Med CBT-i・ENDEAVORRIDE は国内承認済み、糖尿病向け SMC-01 は研究段階、Sleepio・Daylight・EndeavorRx は海外承認のみ (日本未上陸) です。
処方には製品によって施設基準の届出 (例: 禁煙アプリにおけるニコチン依存症管理料の施設基準) や医師の研修修了 (例: 不眠アプリにおける CBT-I 研修・適正使用研修) が前提となる場合があります。また令和 8 年度改定でプログラム医療機器等指導管理料にオンライン診療版 (情報通信機器を用いた場合 78 点) が新設され、その算定には別途の施設基準届出が必要です (2026 年 6 月時点)。
具体的な点数・材料価格・施設基準の細目は告示・通知で定まり改定で変動するため、本ガイドでは断定せず、処方前に最新の公式・公的資料で確認することを前提とします。当サイトの保険・制度アップデートでも改定動向を追跡しています。
よくある質問
- Q. 治療用アプリは普通の健康アプリと何が違うのですか?
- 治療用アプリ (DTx) は、医療機器プログラム (SaMD) として薬事承認を受け、医師が処方して使う点が一般の健康アプリと根本的に異なります。本ガイドの CureApp HT・CureApp SC・サスメド Med CBT-i・ENDEAVORRIDE はいずれも国内で薬事承認を取得した保険適用 (または保険償還) の製品で、効果も製品そのものを対象とした査読付き臨床試験で検証されています。承認を受けていない製品は『治療用アプリ』として処方できません。
- Q. どの疾患の患者から導入を検討すればよいですか?
- このカテゴリは疾患ごとに製品が分かれるため、自院の外来に多い疾患から検討するのが基本です。国内で保険適用されているのは高血圧 (CureApp HT)、ニコチン依存症 (CureApp SC)、不眠障害 (サスメド Med CBT-i)、小児 ADHD (ENDEAVORRIDE) などです。糖尿病向けの SMC-01 は第 III 相 RCT で主要評価項目に有意差が出ず研究段階のため、現時点では処方できません。
- Q. 処方するのに施設基準の届出や研修は必要ですか?
- 製品によって必要です。たとえば CureApp SC (禁煙) はニコチン依存症管理料の施設基準を地方厚生局に届け出た医療機関で処方する形で、サスメド Med CBT-i (不眠) は医師が CBT-I 研修またはサスメドの適正使用研修を修了したうえで処方する設計です。また令和 8 年度改定でプログラム医療機器等指導管理料のオンライン診療版 (78 点) が新設され、その算定には別途の施設基準届出が必要になりました。詳細は製品ごとの公式情報と最新の公的資料で確認してください (2026 年 6 月時点)。
- Q. 費用 (診療報酬) はどのくらいかかりますか?
- 保険診療としてプログラム医療機器等指導管理料 90 点 (月 1 回)・導入期加算 50 点 (初回のみ) が算定される製品があり、これに製品ごとの特定保険医療材料が加わります。公式・公的資料で確認できる範囲では、特定保険医療材料は CureApp HT が 7,010 円、サスメド Med CBT-i が 24,100 円、ENDEAVORRIDE は保険償還価格 14,500 円です。点数・材料価格は改定で変わるため、処方前に最新の公式・公的資料で確認してください (2026 年 6 月時点)。
- Q. 海外の Sleepio や EndeavorRx は日本で使えますか?
- いずれも日本未上陸で、現時点では日本での処方・提供は確認できません (2026 年 6 月時点)。Sleepio は英国 NICE MTG70 で推奨され NHS スコットランドで全国提供、Daylight は不安向けに FDA クリアランス取得、EndeavorRx は小児 ADHD 向けに FDA De Novo 認可と、海外では承認・展開が進んでいます。日本で処方できる治療用アプリは国内で薬事承認・保険収載された製品に限られますが、これらは効果検証の到達点を知るベンチマークとして参考になります。
最終確認日: 2026-06-13。本ガイドは公開情報と編集部の調査に基づき、掲載料は受け取っていません。
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